先に結論 閉所と休日は別の物差しで測られる
4週8閉所は現場を何日閉めたかの話で、時間外労働の上限規制は働いた人ひとりの時間の話になる。現場を土日に閉めていても、その人が別の現場に入っていれば個人の時間は積み上がる。逆に現場が動いていても、交代で休めていれば規制は守れる。数え方を分けるところから始める。
| 言葉 | 何を数えるか | 根拠 |
|---|---|---|
| 4週8休 | 働く人ひとりの休日の日数 | 工期に関する基準が掲げる目標 |
| 4週8閉所 | 現場を閉めた日数の割合 | 令和7年度までの国土交通省直轄工事で28.5%以上と定義 |
| 完全週休2日 土日 | 対象期間の全ての週で土日を閉所したか | 同じ通知の定義 |
| 時間外労働の上限規制 | 働く人ひとりの時間外労働と休日労働の時間 | 労働基準法36条 |
| 法定の休日 | 毎週1回または4週4日 | 労働基準法35条 |
2026年4月で国の補正はなくなった
令和8年3月10日付の通知(国会公契第21号、国官技第492号)で、国土交通省は直轄工事の方針を変えた。これまで行ってきた週休2日の取得に要する費用の計上等による試行は完了とし、今後は費用計上等を実施しない。令和8年4月1日以降に入札公告等を行う工事に適用され、令和8年3月31日までに公告した工事には従前の通知が生きる。対象は官庁営繕関係と港湾空港関係を除く直轄工事だ。令和7年度までは、閉所の状況に応じて次の補正係数を各経費に乗じていた。
| 区分 | 労務費 | 共通仮設費率 | 現場管理費率 |
|---|---|---|---|
| 完全週休2日 土日 適用工事 | 1.02 | 1.02 | 1.03 |
| 月単位の週休2日 適用工事 | 1.02 | 1.01 | 1.02 |
見積の作り方が変わった。補正で後から戻ってくる前提が消えたので、休みを取るために必要な日数と費用は、最初から工期と見積に入れておくしかない。同じ通知は、多様な働き方を支援する観点から、発注者は施工期間や時間等の変更について受注者から協議があった場合には丁寧に協議に応じるものとする、としている。協議は受注者の側から出す。
この通知が適用されるのは国土交通省の直轄工事だ。ほかの発注者の工事がどうなるかは、入札説明書と特記仕様書を1件ずつ読んで確かめる。
4週8閉所の判定は日数ではなく割合で決まる
令和7年度までの運用では、月単位の週休2日は、対象期間内の全ての月で現場閉所日数の割合が28.5パーセント(8日/28日)以上の状態を指した。暦の上の土日だけでは28.5パーセントに満たない月は、その月の土日の合計日数以上に閉所していれば達成とみなす。降雨や降雪による予定外の閉所日も、閉所日数に含めてよい。
現場閉所の定義は狭い。巡回パトロールや保守点検など現場管理上必要な作業を行う場合を除き、現場事務所での事務作業を含めて1日を通して現場や現場事務所が閉じている状態をいう。誰かが事務所で書類を作っていれば、その日は閉所にならない。対象期間は工事着手日から工事完成日までだが、次の期間は含まない。
- 年末年始休暇の6日間
- 夏季休暇の3日間
- 工場製作のみを実施している期間
- 工事全体を一時中止している期間
- 発注者があらかじめ対象外としている内容に該当する期間
- 受注者の責によらず現場作業を余儀なくされる期間
現場を閉めても一人が守れていない場合がある
上限規制は事業場ごとの36協定と、働く人ひとりの実労働時間で測る。労働時間とは使用者の指揮命令下にある時間を指す。厚生労働省のQ&Aは、建設業で特に取りこぼしやすい時間を具体的に挙げている。
- 指示があれば即座に業務に入ることを求められ 労働から離れることが保障されていない手待時間
- 社用車に乗り合って現場へ向かうことが指示されている場合の移動時間
- 移動の前に会社へ集合して資材を積み込む時間 戻ってからの道具清掃や資材整理
- 移動の車中に使用者や上司も同乗して打合せが行われている時間
- 指示による着替えや作業準備 業務終了後の清掃など事業場内で行う後始末
- 参加が業務上義務づけられている研修や安全衛生教育を受講する時間
分かれ目は指示があるかどうかだ。工事現場に直行直帰することが自由で、作業員どうしが任意に集合時刻や運転者を決めて乗り合っていた場合は、労働時間に当たらないと整理されている。ここを曖昧にしたまま集計すると、閉所率は達成なのに一人の時間は上限を超えている、という食い違いが起きる。
守るべき上限の数字
| 区分 | 上限 |
|---|---|
| 原則の限度時間 | 月45時間 年360時間 |
| 特別条項を結んだ場合の年間 | 年720時間 |
| 時間外と休日労働の合計 単月 | 100時間未満 |
| 時間外と休日労働の合計 2から6か月平均 | 80時間以内 |
| 月45時間を超えられる月数 | 年6か月まで |
建設業への適用は2024年4月から始まっている。例外は災害時における復旧及び復興の事業だけで、労働基準法附則139条1項により、単月100時間未満と2から6か月平均80時間以内の規制が適用されない。年720時間の上限と、月45時間を超えられるのは年6か月までという制限は、この事業でも適用される。
法律が定める休日の最低ライン
労働基準法35条は、毎週少なくとも1回の休日を与えなければならないとし、4週間を通じ4日以上の休日を与える使用者にはこの規定を適用しないとする。法律の最低ラインは4週4休だ。4週8休は法定の義務ではなく、中央建設業審議会が作成した工期に関する基準が、確保すべき目標として掲げている。ここを取り違えたまま社内で説明すると、話が噛み合わなくなる。
工期を取りに行くための条文
建設業法19条の5は、注文者も建設業者も、その工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはならないと定める。禁止は両側にかかっている。下請へ回すときも同じだ。
19条の6第2項は、請負代金の額が政令で定める金額以上の契約について、違反した発注者に許可行政庁が必要な勧告をすることができるとする。建設業法施行令5条の8はその金額を500万円、建築一式工事の場合は1,500万円としている。勧告に従わないときは、その旨を公表することができる。公共工事では、受注者が下請と著しく短い工期で契約していると疑うに足りる事実があるとき、発注者は許可行政庁へ通知しなければならない。
ただし勧告は後の話で、手前でやることが2つある。19条1項4号は、工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容を書面に記載しなければならないとする。土日を閉めるなら契約書に書く。20条1項は、材料費等記載見積書に、工事の工程ごとの作業及びその準備に必要な日数を記載するよう努めることを求める。同条4項で、注文者はその見積書の内容を考慮するよう努めるものとされている。
| 場面 | やること | 条文 |
|---|---|---|
| 見積を出すとき | 工程ごとの作業と準備に必要な日数を書く | 建設業法20条1項 |
| 契約を結ぶとき | 工事を施工しない日または時間帯を書面に入れる | 建設業法19条1項4号 |
| 工期に影響する事象の兆しが見えたとき | 契約を締結するまでに注文者へ通知する | 建設業法20条の2第2項 |
| その事象が実際に起きたとき | 工期や工事内容や代金の変更協議を申し出る | 建設業法20条の2第3項 |
| 下請と契約するとき | 下請にも適正な工期を設定する | 建設業法19条の5 品確法8条2項 |
繁閑の差は1年単位の変形労働時間制で吸収する
降雪期は動けない、そのぶん他の時期に作業が集中する。こういう会社には1年単位の変形労働時間制がある。労使協定であらかじめ労働日と労働日ごとの労働時間を特定し、対象期間を平均して1週間の所定労働時間が40時間を超えない範囲で、各週各日の所定労働時間を決める。
| 項目 | 限度 |
|---|---|
| 対象期間を平均した1週あたりの所定労働時間 | 平均40時間を超えない |
| 労働日数の限度 | 年間280日 対象期間が3か月を超える場合 |
| 1週の所定労働時間の限度 | 52時間 |
| 1日の所定労働時間の限度 | 10時間 |
| 連続労働日数の限度 | 原則6日 特定期間は1週間に1日の休日が確保できる日数 |
| 所定労働時間が1週48時間を超える週 対象期間が3か月を超える場合 | 連続する週数は3以下 3か月ごとに区分した各期間で週の初日の数は3以下 |
最後の1週48時間を超える週の制限は、労働基準法施行規則附則65条の特例で外れることがある。積雪の度が著しく高い地域として厚生労働大臣が指定する地域にある事業場で、冬期にその地域の事業活動の縮小を余儀なくされる事業として指定された事業に従事し、屋外で作業を行う必要がある業務として指定された業務に就く労働者が対象になる。自社の地域と事業と業務が指定に当たるかは、労働基準監督署に確かめる。1年分の勤務カレンダーを先に確定できないという理由で諦めなくてよい。対象期間を1か月以上の期間に区分し、労使協定を結ぶときに期間ごとの所定労働日数と所定労働時間数、そして最初の期間のカレンダーを決める。2か月目以降のカレンダーは、その期間が始まる少なくとも30日前までに定めればよい。定めるときは、過半数組合か、それがなければ過半数代表者の同意が要る。
変形労働時間制を入れても36協定は必要になる。法定労働時間を超える所定労働時間を設定した週や日については、その設定した時間を超えた分が時間外労働になる。
発注者に投げ返す根拠
公共工事なら品確法7条1項11号がある。発注者は、公共工事等に従事する者の労働時間その他の労働条件が適正に確保されるよう、従事する者の休日、実施に必要な準備期間、天候その他のやむを得ない事由により実施が困難と見込まれる日数等を考慮し、適正な工期等を設定することとされている。8条2項は、下請契約でも適正な工期等を定めるよう受注者側に求める。
民間工事にも根拠はある。労働安全衛生法3条3項は、建設工事の注文者その他の仕事を他人に請け負わせる者は、施工方法や作業方法、工期、納期等について、安全で衛生的な作業の遂行を損なうおそれのある条件を付さないように配慮しなければならないと定める。工期に関する基準の適用範囲も、公共工事と民間工事を問わずあらゆる建設工事とされ、発注者と受注者(下請人を含む)が対象になる。
2026年1月29日には、厚生労働省労働基準局長と国土交通省不動産・建設経済局長の連名で、公共発注者へ協力依頼が出ている。週休2日を確保し、受注者とその下請負人が上限規制を遵守できる工期の設定に協力すること、技能者や重機のオペレーターの現場への移動時間も労働時間に該当しうることへ配慮すること、工程の遅れで受注者から協議の申出があったときは適切に応じ必要な契約変更を行うこと。交渉の場で、この文書があること自体が効く。
閉所が向かない現場もある
工期に関する基準は逃げ道も書いている。年末年始やゴールデンウィーク、夏休みなどの交通集中期間における工事規制、山間部や遠方といった地域特性、交通や旅客に対する安全配慮、災害復旧などの緊急時対応を求められる工事では、必ずしも4週8閉所等が適当とは限らない工事が存在すると明記している。
その場合に基準が挙げるのが交代勤務制だ。維持工事やトンネル工事、災害からの復旧・復興工事の対応など、工事の特性や状況によっては、交代勤務制を活用することが担い手一人ひとりの4週8休を確保する有効な手段の一つになるとしている。現場を閉めるか、人を回すか。選べる工事と選べない工事がある。同じ基準は、日給月給制の技能労働者等の処遇水準の確保に十分留意し、十分な工期の確保や交代勤務制の実施等に必要となる経費を請負代金の額に適正に反映したうえで、適切な賃金水準の確保を図る必要があるとも書いている。休みを増やして手取りが減れば、人は残らない。
今週から動かす順番
- 直近3か月について 現場の閉所日と 一人ひとりの労働日を別々に数え直す
- 移動 積み込み 片付け 安全教育の時間を労働時間に入れるかどうかを決めて社内で統一する
- 次に出す見積から 工程ごとの作業と準備に必要な日数を書いて添える
- 次に結ぶ契約書に 工事を施工しない日または時間帯を入れる
- 繁閑の差が大きいなら 1年単位の変形労働時間制の労使協定を検討する
一番手間がかかるのは1番目だ。閉所日は現場の記録から出せても、一人ひとりの労働日と労働時間は、打刻と日報が現場ごとに散らばっていると集まらない。集計に人手をかけるほど、その集計作業自体が誰かの残業になる。記録の取り方を先に変えるほうが早い。移動と積み込みを含めて1日の始まりと終わりが自動で残る形にしておけば、閉所率と個人の労働時間が同じデータから出る。記録を残す作業そのものを軽くする道具もある。
よくある質問
- 4週8閉所と4週8休は同じですか
- 別のものです。4週8閉所は現場を閉めた日数を数え、4週8休は働く人ひとりの休日を数えます。現場が閉まっていても、その人が別の現場に入っていれば休みにはなりません。国土交通省の直轄工事では、月単位の週休2日を現場閉所率28.5パーセント以上として判定していました。
- 週休2日工事の補正係数はまだありますか
- 国土交通省の直轄工事では、令和8年4月1日以降に入札公告等を行う工事から、週休2日の取得に要する費用の計上等による試行が完了しました。令和8年3月10日付の通知で、今後は費用計上等を実施しないとされています。令和8年3月31日までに入札公告等を行った工事には、従前の通知が適用されます。
- 4週8休は法律の義務ですか
- 労働基準法35条が求めるのは、毎週少なくとも1回の休日か、4週間を通じて4日以上の休日です。4週8休はこの最低ラインより多く、法律上の義務ではありません。中央建設業審議会が作成した工期に関する基準が、確保すべき目標として掲げているものです。
- 現場までの移動時間は労働時間に入りますか
- 指示があるかどうかで分かれます。社用車への乗り合いが指示されている場合、会社に集合して資材を積み込む場合、車中に上司が同乗して打合せをしている場合は、労働時間に該当すると整理されています。直行直帰が自由な中で作業員どうしが任意に乗り合いを決めていた場合は該当しません。
- 工期が短すぎるとき断る根拠はありますか
- 建設業法19条の5が、注文者にも建設業者にも、通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間を工期とする請負契約の締結を禁じています。請負代金が500万円、建築一式工事なら1,500万円以上の契約では、違反した発注者に許可行政庁が勧告でき、従わないときは公表できます。相談先として駆け込みホットラインが各地方整備局等に置かれています。
- 災害の復旧工事でも上限規制は同じですか
- 一部が違います。災害時における復旧及び復興の事業には、時間外労働と休日労働の合計を単月100時間未満、2から6か月平均80時間以内とする規制が適用されません。一方で、年720時間の上限と、月45時間を超えられるのは年6か月までという制限は適用されます。
出典: 国土交通省 国土交通省直轄工事における週休2日の取組方針について(令和8年3月10日付 国会公契第21号 国官技第492号)
出典: 国土交通省 工事における週休2日の取得に要する費用の計上について(試行)(令和7年3月12日付 国会公契第43号 国官技第476号)
出典: 中央建設業審議会 工期に関する基準(令和2年7月20日作成 令和6年3月27日最終改定)
出典: 厚生労働省 建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制
出典: 厚生労働省 建設業の時間外労働の上限規制に関するQ&A(令和5年7月6日公表)
出典: 厚生労働省 建設業の時間外労働の上限規制に関するQ&A 追補分(令和7年6月19日追補分を含む)
出典: 厚生労働省・国土交通省 建設業の働き方改革等の実現に向けた取組の実施について(協力依頼)(令和8年1月29日 公共工事の発注者向け)
出典: 労働基準法(昭和22年法律第49号)e-Gov法令検索
出典: 労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号)e-Gov法令検索
出典: 建設業法(昭和24年法律第100号)e-Gov法令検索
出典: 建設業法施行令(昭和31年政令第273号)e-Gov法令検索
SOKUOYAKATA編集部
