先に結論 建設工事の下請代金は建設業法で決まる
建設工事の下請代金には、下請法の60日ルールは使えない。期限を決めているのは建設業法だ。元請が注文者から支払を受けたときは、その日から1月以内。元請が特定建設業者なら、発注者から金が入っているかどうかに関係なく、下請が引渡しを申し出た日から起算して50日以内。この2つは同時にかかり、早く来るほうが実際の締切になる。
| 場面 | 支払わなければならない期限 | 根拠 |
|---|---|---|
| 元請が注文者から出来形部分または工事完成後の支払を受けたとき | 支払を受けた日から1月以内 かつできる限り短い期間内 | 建設業法24条の3第1項 |
| 特定建設業者が注文者となった下請契約(相手が特定建設業者でも資本金4,000万円以上の法人でもないもの) | 引渡しの申出の日から起算して50日以内 かつできる限り短い期間内 | 建設業法24条の6第1項 建設業法施行令7条の2 |
| 支払期日を定めなかったとき | 引渡しの申出の日が支払期日とみなされる | 建設業法24条の6第2項 |
| 50日を超える期日を定めたとき | 引渡しの申出の日から50日を経過する日が支払期日とみなされる | 建設業法24条の6第2項 |
国土交通省の建設業法令遵守ガイドライン第12版は、この2つの関係をはっきり書いている。特定建設業者の支払期限は、注文者から出来高払または竣工払を受けた日から1月を経過する日か、下請が引渡しの申出を行った日から起算して50日以内で定めた支払期日か、いずれか早い期日になる。
下請法は建設工事には使えない
2026年1月1日、下請代金支払遅延等防止法は名前が変わった。いまの正式名は製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律で、改めたのは令和7年法律第41号。国土交通省のガイドラインはこれを取適法と略している。
その2条4項は、役務提供委託の定義から「建設業を営む者が業として請け負う建設工事の全部又は一部を他の建設業を営む者に請け負わせること」を明文で除いている。建設工事の請負は最初から対象外だ。3条の「給付を受領した日から起算して60日以内」も、6条の遅延利息も、建設の下請代金にはかからない。
外れているのは建設工事の請負であって、建設会社が結ぶ契約すべてではない。資材の製造を頼む、設計図の作成を頼む、といった委託は建設工事の請負ではない。資本金や従業員数の条件に当たれば、その取引は取適法の側に入る。ここを一括りにすると読み違える。
| 建設工事の下請 | 建設工事の請負にあたらない委託 | |
|---|---|---|
| 使う法律 | 建設業法 | 取適法(旧 下請代金支払遅延等防止法) |
| 支払期日の上限 | 注文者から支払を受けた日から1月以内 特定建設業者は引渡しの申出から50日以内 | 給付を受領した日から起算して60日以内 |
| 支払期日を定めなかったとき | 引渡しの申出の日 | 給付を受領した日 |
| 遅延利息の率 | 年14.6パーセント | 公正取引委員会規則で定める率 |
相手が一人でやっている会社のとき
従業員を使わない個人、または代表者以外に役員がおらず従業員も使わない法人が相手のときは、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和5年法律第25号)が重なる。同法4条1項は、給付を受領した日から起算して60日以内で、かつできる限り短い期間内に報酬の支払期日を定めることを求める。元請から受けた仕事を再委託し、再委託である旨と元委託の支払期日などをあらかじめ明示した場合は、4条3項により元委託の支払期日から起算して30日以内になる。国土交通省のガイドラインも、この法律を建設業者との取引の場面で取り上げている。
特定建設業者だけにかかる50日
特定建設業の許可は、発注者から直接請け負う1件の工事について、下請代金の総額が5,000万円以上、建築工事業なら8,000万円以上になる下請契約を結んで施工しようとする者が受ける(建設業法3条1項2号、建設業法施行令2条)。会社の規模ではなく、その工事でいくら下に流すかで決まる。
24条の6が効くのは、特定建設業者が注文者になった下請契約だ。ただし相手の下請が特定建設業者であるとき、または資本金4,000万円以上の法人であるときは外れる(建設業法施行令7条の2)。
- 発注者から代金が入っているかどうかは関係ない
- 起算日は下請が引渡しを申し出た日
- 期日を定めなければ 申出の日が支払期日とみなされる
- 50日を超える期日を定めれば 申出の日から50日を経過する日が支払期日とみなされる
- 払わなければ 50日を経過した日から支払日まで遅延利息がつく
遅延利息の率は建設業法24条の6第4項が国土交通省令に委ねていて、建設業法施行規則14条が年14.6パーセントと定めている。日数に応じて未払金額に掛ける。
起算日は請求書ではなく引渡しの申出
50日の時計は請求書を受け取った日から動くのではない。建設業法24条の4第2項の申出の日から動く。そこに至るまでの手順も条文に書いてある。
- 下請が工事の完成を元請に通知する
- 元請は通知を受けた日から20日以内 かつできる限り短い期間内に検査を完了する
- 完成を確認したあと 下請が申し出たら元請は直ちに引渡しを受ける
- その申出の日から50日の時計が動きだす
引渡しの時期に特約を置くことはできる。ただし24条の4第2項ただし書が認めているのは、下請契約で定めた工事完成の時期から20日を経過した日以前の一定の日に引渡しを受ける特約に限られる。工期の終わりから20日より先に引渡日を置いて、起算日を後ろへずらすことはできない。
ガイドラインは、検査も引渡しも終わっているのに下請からの請求行為がないことを理由に法定期限を超えて支払わない場合を、建設業法上違反となるおそれがある行為事例に挙げている。請求書が来ていないは理由にならない。
手形で払うときの線
建設業法24条の6第3項は、特定建設業者が支払期日までに一般の金融機関による割引を受けることが困難だと認められる手形を交付することを禁じている。ガイドライン第12版は、手形期間が60日を超える長期手形を交付した場合は割引を受けることが困難である手形の交付と認められる場合があり、その場合は同項に違反すると書いている。
現金と手形の割り振りにも線がある。24条の3第2項は、下請代金のうち労務費に相当する部分については現金で支払うよう適切な配慮をしなければならないと定める。ガイドラインは、全額を手形で払う、労務費相当分に満たない額だけを現金で払って残りを手形にする、この2つを望ましくない行為事例に挙げている。
前払金も同じ条文にある。24条の3第3項は、元請が前払金の支払を受けたときは、資材の購入や労働者の募集など工事の着手に必要な費用を前払金として下請に支払うよう適切な配慮をしなければならないとしている。
保留金と長期の支払保留
期日を守っていても、名目を変えて金を止めれば同じことになる。ガイドラインが建設業法上違反となるおそれがある行為事例として並べているのは次のとおりだ。
- 検査と引渡しが終わっているのに 請求行為がないことを理由に法定期限を超えて支払わない
- 基礎 土工 鉄筋などの前工程が完成し検査と引渡しが済んだのに 工事全体が終わるまで保留金として一部を支払わない
- 工事全体が終わったのに 他の工事現場まで保留金を持ち越す
- 注文者から出来形部分の支払を受けたのに 相応する下請代金を1月以内に支払わない
通報したことを理由に取引を切るのも別の条文に当たる。24条の5が守るのは、条文を名指しした通報だ。不当に低い請負代金での契約、不当な使用資材等の購入強制、24条の3第1項や24条の4の違反、24条の6第3項および第4項の違反があるとして、下請が国土交通大臣等や公正取引委員会や中小企業庁長官に通報したことを理由として、取引の停止その他の不利益な取扱いをすることを禁じている。
払った記録を残すところまでが義務
建設業法40条の3は、建設業者に営業所ごとの帳簿の備付けと保存を義務づけている。その下請契約が24条の6第1項の下請契約にあたるときは、書く項目が増える(建設業法施行規則26条1項4号ニ)。
- 支払った下請代金の額 支払った年月日 支払手段
- 手形を交付したときは その手形の金額 交付した年月日 手形の満期
- 一部を支払ったときは その後の下請代金の残額
- 遅延利息を支払ったときは その額と支払った年月日
帳簿には支払った額と年月日と支払手段を証する書面またはその写しを添付する(施行規則26条2項2号)。保存期間は工事目的物の引渡しのときから5年間、発注者と結んだ住宅の新築工事なら10年間(施行規則28条1項)。帳簿を備えない、記載しない、虚偽を書く、保存しないは10万円以下の過料の対象になる(建設業法55条5号)。
現場から見ると、この帳簿は引渡しの申出がいつあったかを後から示せる数少ない社内記録になる。申出の日が動けば50日の起算日も動く。日付をその場で残す運用がない会社は、話がこじれたときに自分の側の主張を裏づけられない。
守らなかったときに何が起きるか
建設業法28条1項は、許可行政庁が建設業者に必要な指示をできる場合を定めている。柱書はこの法律の規定に違反した場合を挙げるが、そこから19条の3第1項、19条の4、24条の3第1項、24条の4、24条の5、24条の6第3項および第4項が名指しで除かれている。除かれていないのは24条の6第1項と第2項で、50日を超える支払期日を定めること自体はここに当たる。一方で同項2号には、請負契約に関し不誠実な行為をしたときが別に置かれている。
特定建設業者にはもう一段ある。41条2項は、下請が工事に使っている労働者への賃金の支払を遅滞した場合に、許可行政庁が特定建設業者へ賃金相当額の立替払その他の適切な措置を勧告できるとしている。28条1項の後段は、この勧告に従わない場合にも指示ができると書く。
入口も用意されている。国土交通省は各地方整備局等に駆け込みホットラインを置き、建設業法違反の可能性がある取引の情報を受け付けている。匿名性に留意して扱うと明示されている。
明日からやること
- 下請契約ごとに 自社が特定建設業者かどうかと 相手が特定建設業者か資本金4,000万円以上の法人かを先に確定させる
- 完成の通知を受けた日 検査を終えた日 引渡しの申出があった日を その場で日付として残す
- 支払サイトを 申出の日から50日以内と 注文者からの入金日から1月以内の 早いほうに合わせ直す
- 手形で払っているなら 手形期間を60日以内に収めて 労務費に相当する部分は現金に振り替える
4つ目までやると、締切の管理が請求書が来たら考えるから引渡しの申出の日から数えるに変わる。
よくある質問
- 下請代金の支払期日はいつまでですか
- 元請が注文者から出来形部分または工事完成後の支払を受けたときは、その日から1月以内です(建設業法24条の3第1項)。元請が特定建設業者で、下請が特定建設業者でも資本金4,000万円以上の法人でもない場合は、下請が引渡しを申し出た日から起算して50日以内という別の期限もかかります(24条の6第1項)。両方かかるときは早いほうが締切になります。
- 建設工事の下請に下請法は使えますか
- 使えません。2026年1月1日に改称された製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律は、2条4項で役務提供委託の定義から建設工事の請負を除いています。建設工事の下請代金は建設業法24条の3と24条の6で判断します。ただし建設会社が結ぶ契約でも、資材の製造や設計図の作成のように建設工事の請負にあたらない委託は、この法律の対象になりえます。
- 発注者から入金がなくても下請に払わないといけませんか
- 元請が特定建設業者なら払う必要があります。建設業法24条の6第1項は、発注者からの支払があったかどうかにかかわらず、引渡しの申出の日から起算して50日以内に支払期日を定めることを求めています。元請が一般建設業者の場合は、24条の3第1項の注文者から支払を受けた日から1月以内が期限になります。
- 支払期日を契約書に書かなかったらどうなりますか
- 建設業法24条の6第2項により、引渡しの申出の日がそのまま支払期日と定められたものとみなされます。50日を超える期日を書いた場合は、申出の日から50日を経過する日が支払期日とみなされます。何も書かないほうが期限は厳しくなります。
- 下請代金を手形で払ってもいいですか
- 特定建設業者は、支払期日までに一般の金融機関による割引を受けることが困難だと認められる手形を交付できません(建設業法24条の6第3項)。国土交通省の建設業法令遵守ガイドラインは、手形期間が60日を超える長期手形はこれに当たると認められる場合があるとしています。加えて24条の3第2項が、労務費に相当する部分は現金で支払うよう適切な配慮を求めています。
- 支払が遅れたら利息はつきますか
- 特定建設業者が支払期日までに払わなかった場合、引渡しの申出の日から50日を経過した日から支払をする日までの日数に応じて、未払金額に年14.6パーセントを掛けた遅延利息を払わなければなりません(建設業法24条の6第4項、建設業法施行規則14条)。契約書に利息の定めがなくても発生します。支払った遅延利息の額と年月日は帳簿に記載します。
出典: 建設業法(昭和24年法律第100号)e-Gov法令検索
出典: 建設業法施行令(昭和31年政令第273号)e-Gov法令検索
出典: 建設業法施行規則(昭和24年建設省令第14号)e-Gov法令検索
出典: 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(昭和31年法律第120号)e-Gov法令検索
出典: 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和5年法律第25号)e-Gov法令検索
SOKUOYAKATA編集部

