人材・労務10

建退共の証紙と電子申請でつまずくところ

掛金の日額は320円の一本で迷う余地がない。手が止まるのは、いつ買っていつ出すかのほうだ。証紙と電子ポイントでつまずく場所を並べた。

先に結論 つまずくのは掛金の額ではなく順番と期限

建退共で手が止まる場所は決まっている。公共工事でポイントや証紙をいつ買うか、掛金収納書をいつ発注者へ出すか、就労日数をいつまでに報告するか。掛金の日額は320円の一本で、交渉の余地はない。困るのは金額ではなく順番と期限だ。

つまずく場面実際のきまり
公共工事でポイントや証紙を買う時期契約締結より前に買うと発注者に受け付けてもらえないことがある
掛金収納書を発注者へ出す時期工事契約の締結から 電子ポイント方式は40日以内 証紙貼付方式は1か月以内
就労日数を報告して掛金を充当する期限賃金を支払う期日の属する月の翌月末日まで
元請から辞退届を求められたとき建退共に辞退届という書式はない
証紙が余ったとき退職金ポイントに交換できる 逆はできない
電子に切り替えたあとの共済手帳なくならない 次回更新時期が来たら更新する

掛金は日額320円の一本

中小企業退職金共済法44条は、掛金を日を単位として定め、被共済者一人につき300円以上800円以下の範囲で規程に定めるとしている。日額は業種ごとに単一で、10円未満の端数も置けない。建退共は320円。共済証紙は1日券が320円、10日券が3,200円だ。

納めるのは働いた日数分だ。公共工事か民間工事かを問わず、被共済者が現場で就労した日について納める。休日と欠勤日は納めない。有給休暇と会社都合の休業日は納める。1日の労働時間が8時間を超えたら、超えた部分を8時間単位で1日分加算する。深夜作業が翌日に4時間以上繰り込んだときは、8時間に足りなくても1日分を足す。

21時から翌9時まで働いた場合は2日分になる。21時から翌5時までで8時間、5時から9時までの4時間が超過分にあたり、それが翌日に入っているためだ。同じ日に別々の事業主に雇われて働いたときは、それぞれの事業主が納める。

証紙貼付方式でつまずくところ

証紙は建退共と代理店契約を結んだ金融機関の窓口でしか買えない。共済契約者証の原本を出し、その証票と同じ色の証紙を買う。専用サイトで見られる共済契約者証のPDFでは買えない。金券ショップやオークションでの売買も認められていない。

購入すると掛金収納書が発注者提出用と契約者用の2枚交付される。これは領収書と同じ扱いで、証紙を売った都度、金融機関が記入して作る。事前に受け取って自分で書いておくことはできない。

貼るのは賃金を支払う都度で、少なくとも月に1回。会社名と年月日の入った印で消印する。1冊目の掛金助成手帳は1日券を貼る欄が200日分と掛金助成欄が50日分で、就労日5日ごとに1日が掛金免除になる。免除の日は貼らずに消印だけをする。合わせて250日分で1冊が終わる。

2冊目以降は10日券の欄と1日券の欄がそれぞれ250日分ある。混ぜて貼るときでも合計250日分までだ。貼り終わったとき、または表紙の次回更新時期が来たときに更新手続きをする。買った枚数と下請へ交付した枚数と貼った枚数がわかるように、共済証紙受払簿も作る。

電子ポイント方式でつまずくところ

電子ポイント方式は、月に一度、就労日数を電子申請専用サイトに報告し、先に買っておいた退職金ポイントを充当して納める。中小企業退職金共済法44条5項が、電子情報処理組織で就労の実績を報告することとした場合には証紙を貼る方法に代えて現金で納付できると定めており、証紙をやめる根拠は法律の側にある。

ポイントは3,000円分以上から10円単位で買う。支払いはペイジーか口座振替。赤は労働者300人以下または資本金3億円以下の中小事業主に雇われる労働者用、青は300人超かつ3億円超の大手事業主に雇われる労働者用で、この線引きは証紙の色と同じだ。

充当には期限がある。賃金を支払う期日の属する月の翌月末日までに、専用サイトから充当の手続きをする。毎月25日払いなら、5月25日払いの分は6月末日まで。充当が終わると掛金充当書が出るので、申請した内容と食い違っていないかを見る。

令和8年11月から収納代行業者が変わり、ほとんどの金融機関で口座振替が使えるようになる。あわせて振替日が動く。都度購入の個別振替は12日と26日から5日と23日へ、毎月定額の月額振替は26日から23日へ。令和8年10月以前から口座振替を使っている場合は、口座振替依頼書の再提出がいる。

証紙貼付方式との併用はできる。段階的に切り替えることも、証紙を残したまま一部の工事だけ電子にすることもできる。ただし同じ就労日をポイントと証紙で二重に納めないよう気をつける。余った証紙はポイントに交換できるが、逆はできない。交換の前に貼り漏れを確かめる。

切り替えても共済手帳はなくならない。手帳は被共済者に1冊ずつ交付され、退職金を請求するときに要る。表紙の次回更新時期が来たら、証紙が1枚も貼られていなくても更新手続きをする。ここを止めると経審の加入・履行証明書が出なくなる。

公共工事は元請がまとめて買う

公共工事では、下請の分も含めた掛金相当額が予定価格に積算されている。だから元請が下請の被共済者分まで購入する。下請は建設業退職金共済制度加入労働者数報告書で自社の対象労働者を元請に報告し、一次下請は二次以下の分も取りまとめて出す。

元請から辞退届を出してほしいと言われることがある。建退共に辞退届という書式はない。掛金の充当や証紙の交付を辞退することもできない。慣用的に使われてきただけの紙なので、求められたらそこを確認する。

買う額は、対象労働者数と延べ就労日数を把握してその分だけ買うのが原則だ。把握が難しいときのために、工事の規模と種別ごとの目安がある。総工事費に下の値を掛け、そこへ対象工事の建退共加入率を70%で割った比率を掛けて算定する。

総工事費土木 舗装建築 住宅・同設備設備 屋外の電気等設備 機械器具設置
1,000〜9,999千円3.5/10004.8/10002.9/10002.2/1000
10,000〜49,999千円3.3/10002.9/10002.1/10001.7/1000
50,000〜99,999千円2.9/10002.7/10001.8/10001.4/1000
100,000〜499,999千円2.3/10002.2/10001.4/10001.1/1000
500,000千円以上1.7/10002.0/10001.1/10001.1/1000

総工事費5,000万円の土木・舗装工事で加入率が50%なら、50,000,000×2.9/1000×50%/70%で103,571円になる。発注者が独自の購入率を設けていることがあるので、算定の前に確認しておく。

買う時期にも落とし穴がある。契約締結の前に買うと、発注者によっては受け付けてもらえない。共同企業体で請け負ったときは各構成員が分担比率に応じて買うのが原則で、代表企業が一括して買うと、ほかの構成企業には購入実績が残らない。

買ったら、掛金収納書を発注者へ出す。期限は方式で違う。電子ポイント方式は電子申請専用サイトから出力したものを工事契約の締結から40日以内に、証紙貼付方式は金融機関が交付した発注者用の掛金収納書を掛金収納書提出用台紙(様式第033号)に貼って工事契約の締結から1か月以内に出す。

現場には現場標識を掲げる。シールは都道府県支部が無料で配っており、発注者の所在地と現場の所在地が違うときは現場のある都道府県の支部名が入ったものを使う。工事が終わったら就労状況報告書と掛金充当書を1年間保存する。電磁的記録でよい。納付日数が購入日数を大きく下回るときは、報告が足りていないので確認して追加で納める。

経営事項審査の加入・履行証明でつまずくところ

経審で加点を受けるには加入・履行証明書がいる。条件は4つ。共済手帳の更新が適正なこと。退職給付拠出額等の総額が被共済者の就労日数に見合うこと。証紙貼付方式の公共工事が施工高に入っているなら工事別共済証紙受払簿が完成後1年間備え付けてあること。下請への交付または充当が適正なこと。

自社に被共済者がおらず、下請へ交付するためだけに加入している会社が、決算期間中に一度も交付も充当もしていない場合は受け付けられない。決算期間中に手帳の更新ができなかったときは、証明願の申請日までに手続きを済ませておく。

毎月21日以上の納付がないと発行されない、という決まりはない。掛金は現場の就労日数に応じて納めるものだからだ。共済手帳受払簿で現場就労日数と勤怠管理者の自署が確認でき、その日数に見合う納付が確認できればよい。確認できないときは出勤簿の写しを求められる。

加入できる人とできない人

  • 現場で働く人は職種も月給日給の別も役付かどうかも問わない 国籍も問わない
  • 現場のガードマンや炊事婦も その建設業者に雇用されていれば対象になる
  • 警備会社から派遣されたガードマンや 給食会社が請け負う食堂の炊事婦は対象にならない
  • 事業主 役員報酬を受けている人 本社などの事務専用社員は加入できない
  • 同居の親族だけを雇う事業所の使用者と 個人企業の配偶者も加入できない
  • 中退共 清退共 林退共の被共済者になっている人は加入できない

掛金と退職金の扱い

払い込んだ掛金は、法人なら損金、個人なら必要経費に全額算入できる。元請が負担した下請の掛金も工事原価に入る。ただし充当も貼付も交付もしなかった分は認められない。買った時点では経費にならないので、ポイントは前払い掛金などの資産勘定、証紙は材料貯蔵品に計上しておき、充当や貼付のつど落とす。

退職金は機構から労働者へ直接支払われる。請求できるのは掛金納付月数が12月以上になったときで、月数は納付日数の合計を21で割り、小数点以下を四捨五入して出す。12月以上24月未満のうちは、額は納めた掛金の3割から5割程度にとどまる。なお令和8年10月1日から、この制度の予定運用利回りが1.3%から1.5%に引き上げられる。

明日やること

  1. 公共工事を受注したら 契約締結のあとに買い 掛金収納書を電子ポイント方式は40日以内 証紙貼付方式は1か月以内に発注者へ出す
  2. 賃金支払日の属する月の翌月末日までに 就労日数を報告して充当を終える
  3. 有給休暇と会社都合の休業日を 納付の対象から落としていないか確かめる
  4. 共済手帳の次回更新時期を一覧にして 決算期間の中で更新を終わらせる
  5. 下請への交付と充当の記録を 決算期間ごとにそろえておく

どちらの方式を選んでも、要るものは同じだ。誰がどの現場で何日働いたか。それが日ごとに残っていれば、証紙を貼るのも、専用サイトに入れるのも、加入・履行証明願を書くのも、写す作業で済む。残っていなければ、月末に思い出しながら数えることになる。この記録を残す手間そのものを軽くする道具もある。

よくある質問

民間工事でも建退共の掛金を納める必要はありますか
あります。掛金は公共工事か民間工事かを問わず、被共済者が現場で働いた日数に応じて納めます。公共工事では掛金相当額が予定価格に積算されているため元請がまとめて購入します。民間工事には積算がないので、原則として労働者を直接雇用した事業主が負担します。元請が下請分を負担しても差し支えありません。
元請から辞退届を出すよう言われましたがどうすればよいですか
建退共に辞退届という書式はありません。公共工事では下請の分も含めた掛金相当額が工事費に積算されているため、退職金ポイントの充当や共済証紙の交付を辞退することはできません。下請は建設業退職金共済制度加入労働者数報告書で、雇用している対象労働者を元請に報告してください。
掛金収納書はいつまでに発注者へ出しますか
方式によって期限が違います。電子ポイント方式は電子申請専用サイトから出力した掛金収納書を工事契約の締結から40日以内に、証紙貼付方式は金融機関が交付した発注者用の掛金収納書を掛金収納書提出用台紙に貼って工事契約の締結から1か月以内に提出します。契約締結の前に購入すると発注者に受け付けてもらえないことがあるので、購入は契約締結のあとにしてください。
電子ポイント方式に切り替えたら証紙貼付方式は使えなくなりますか
併用できます。段階的に切り替えることも、証紙を残したまま一部の工事だけ電子ポイント方式にすることもできます。ただし同じ就労日に対してポイントと証紙で重複して納めないよう注意してください。余った証紙は退職金ポイントに交換できますが、ポイントを証紙に戻すことはできません。
電子ポイント方式にすると共済手帳は不要になりますか
なくなりません。共済手帳は被共済者に1冊ずつ交付されているもので、退職金を請求するときに必要です。表紙に書かれた次回更新時期が来たら、証紙が貼られていなくても更新手続きをしてください。更新が止まっていると、経営事項審査用の加入・履行証明書が発行されません。
退職金はいつから請求できますか
掛金納付月数が12月以上になったときからです。月数は掛金の納付日数の合計を21で割り、小数点以下を四捨五入して求めます。12月以上24月未満の間は、退職金の額は納めた掛金の3割から5割程度になります。退職金は事業主ではなく機構から労働者へ直接支払われます。

出典: 建設業退職金共済事業本部 掛金納付の基準

出典: 建設業退職金共済事業本部 証紙貼付方式

出典: 建設業退職金共済事業本部 電子ポイント方式

出典: 建設業退職金共済事業本部 公共工事を受注したら 元請としてやること

出典: 建設業退職金共済事業本部 共同企業体(JV)の取り扱い

出典: 建設業退職金共済事業本部 経営事項審査用の加入・履行証明

出典: 建設業退職金共済事業本部 掛金の税法上の取り扱い

出典: 建設業退職金共済事業本部 建退共の退職金について

出典: 建設業退職金共済事業本部 よくあるご質問 公共工事に関すること

出典: 建設業退職金共済事業本部 よくあるご質問 電子ポイント方式に関すること

出典: 建設業退職金共済事業本部 よくあるご質問 加入・履行証明に関すること

出典: 建設業退職金共済事業本部 よくあるご質問 加入できる労働者

出典: 建設業退職金共済事業本部 よくあるご質問 退職金ポイント・共済証紙の購入

出典: 建設業退職金共済事業本部 よくあるご質問 掛金納付

出典: 建設業退職金共済事業本部 お知らせ 退職金共済制度の一部改正について(2026年8月7日)

出典: 中小企業退職金共済法(昭和34年法律第160号)e-Gov法令検索

SOKUOYAKATA編集部

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