先に結論 元請かどうかと下請の総額で決まる
施工体制台帳と施工体系図を作るのは、発注者から直接工事を請け負った元請だけだ。民間工事なら、その工事のために結んだ下請契約の請負代金の総額が5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)になったときに義務が生じる。公共工事に金額の下限はなく、下請契約を一件でも結べば必要になる。一次以下の下請には作成義務はない。代わりに、自分がさらに下へ工事を出したときに元請へ通知する義務を負う。
| 立場と工事 | 台帳と体系図 | 根拠 |
|---|---|---|
| 民間工事の元請 下請契約の総額が5,000万円未満 | 不要 | 建設業法24条の8第1項 施行令7条の4 |
| 民間工事の元請 下請契約の総額が5,000万円以上 建築一式工事は8,000万円以上 | 必要 | 建設業法24条の8第1項 施行令7条の4 |
| 公共工事の元請 下請契約を一件でも結んだ | 必要 | 入契法15条1項による読み替え |
| 一次以下の下請 | 不要 ただし再下請負通知が必要 | 建設業法24条の8第2項 |
民間工事の5,000万円は、特定建設業の許可が必要になる下請金額と同じ数字だ(建設業法施行令2条)。国土交通省は、この許可の基準額が令和7年2月1日に4,500万円から5,000万円へ、建築工事業は7,000万円から8,000万円へ引き上げられたと案内している。台帳の基準を定める施行令7条の4も、いまは同じ5,000万円と8,000万円になっている。
公共工事は一社でも下請を使えば作る
公共工事とは、国、特殊法人等、地方公共団体が発注する建設工事をいう(入契法2条2項)。この工事については、入契法15条1項が建設業法24条の8を読み替える。「特定建設業者」は「建設業者」になり、下請金額の条件は「下請契約を締結した」に置き換わる。特定建設業の許可を持たない会社でも、公共工事の元請として下請を一社使えば作成側に回る。
公共工事にはもう一つ義務がある。作成した台帳の写しを発注者に提出することだ(入契法15条2項)。記載事項が変わって作り直したものも出す。建設キャリアアップシステムその他適切なシステムを使って発注者が記載事項を確認できるようにする措置を講じている場合だけ、提出はいらない(入契法施行規則3条)。この免除は令和6年12月13日から動いている。
民間工事では、発注者から請求があったときに台帳を閲覧に供する(建設業法24条の8第3項)。公共工事は写しを出すので、この閲覧の規定は適用されない。そのかわり発注者から施工体制の点検を求められたら拒めない(入契法15条3項)。
台帳に書く中身は四つのかたまり
記載事項は建設業法施行規則14条の2第1項に並んでいる。自社のこと、自社が請け負った工事のこと、下請のこと、下請が請け負った工事のこと。この四つに、現場で働く人の情報がぶら下がる。
- 自社について 許可を受けた建設業の種類 健康保険 厚生年金 雇用保険の加入状況
- 請け負った工事について 名称 内容 工期 発注者の商号と住所 契約日 契約した営業所の名称と所在地
- 現場に置く人について 監督員 現場代理人 主任技術者または監理技術者の氏名と資格 専任かどうかの別 監理技術者補佐を置くならその氏名と監理技術者補佐資格 専門技術者を置くならその氏名と担当する工事の内容と主任技術者資格
- 下請について 商号 住所 建設業者なら許可番号と許可を受けた業種 健康保険等の加入状況
- 下請の工事について 名称 内容 工期 契約日 その下請が置く主任技術者の氏名と資格
- 工事に従事する者について 氏名 生年月日 年齢 職種 社会保険の加入等の状況 退職金共済の被共済者かどうか 受けた安全衛生教育の内容 工事に係る資格
- 一号特定技能外国人と外国人技能実習生の従事の状況
最後の二つが、現場でいう作業員名簿にあたる部分だ。資格の欄だけは、本人が希望しない場合は書かなくてよい。氏名や生年月日にはその逃げ道がない。
添付する書類
- 発注者との請負契約の書面の写し
- 下請契約の書面の写し 自社が注文者でない下請契約で民間工事のものは 請負代金の額の部分を除く
- 主任技術者または監理技術者が資格を持つことを証する書面と 雇用期間を限定せず雇用されていることを証する書面
- 監理技術者補佐や専門技術者を置くときは その資格と雇用を証する書面
添付書類に書いてある事項は、台帳本体での記載を省ける(規則14条の5第1項)。どの箇所がどの書類に対応するかを分かるようにしておくのが条件だ。契約書の写しを付けたのに同じ内容を手で書き写している現場は、そこを止められる。
紙でなくてよい。記載事項をファイルや電磁的記録媒体に記録し、必要に応じて工事現場のパソコンなどの画面にはっきり表示できるなら、台帳への記載に代えられる(規則14条の2第3項)。添付書類も、スキャナで読み取った記録で代えられる(同条4項)。
施工体系図は台帳より書くことが少ない
体系図は台帳の縮約版ではなく、別に定められた表示だ(規則14条の6)。各下請の施工の分担関係が系統的に分かるように作る。
- 作成建設業者の商号または名称
- 工事の名称と工期 発注者の商号 名称または氏名
- 自社が置く主任技術者または監理技術者の氏名 監理技術者補佐を置くならその氏名 専門技術者を置くならその氏名と担当する工事の内容
- 現に施工している下請の商号 代表者の氏名 一般建設業か特定建設業かの別 許可番号
- その下請が請け負った工事の内容と工期 特定専門工事に当たるかどうか 下請が置く主任技術者の氏名
「現にその請け負つた建設工事を施工しているもの」という条件が効く。契約しただけでまだ入っていない会社や、終わって引き上げた会社をそのまま貼りっぱなしにしていると、現場の実態とずれる。下請が建設業者でないときは、商号または名称と代表者の氏名、そしてその工事の内容と工期だけでよい。
掲げる場所は民間と公共で違う。民間工事は「当該工事現場の見やすい場所」(建設業法24条の8第4項)。公共工事は入契法15条1項の読み替えで「工事関係者が見やすい場所及び公衆が見やすい場所」になる。公共は仮囲いの外から読める場所にもう一枚要る、と読んでおくと間違えない。
いつ作っていつまで置くか
台帳は完成品を一度作る書類ではない。それぞれの事項や書類にかかる事実が生じたとき、または明らかになったときに、遅滞なく書き足していく(規則14条の5第3項)。変更があったら、変更があった年月日を付記して直す(同条4項)。見やすいところに自社の商号と許可番号、そして施工体制台帳であることを明示する決まりもここにある。
現場に備え置くのと体系図を掲げるのは、工事目的物の引渡しをするまで(規則14条の7)。発注者との契約に基づく債権債務が先に消滅した場合は、そのときまでとなる。
| 書類 | どこに | いつまで |
|---|---|---|
| 施工体制台帳 添付書類を含む | 工事現場 | 目的物の引渡しまで |
| 施工体系図 | 工事現場に掲示 | 目的物の引渡しまで |
| 台帳のうち技術者と下請に関する部分 | 営業所の帳簿に添付 | 引渡しから5年間 |
| 施工体系図 | 営業所の営業に関する図書 | 引渡しから10年間 |
現場が終われば台帳が消えるわけではない。技術者と下請に関する部分は営業所の帳簿の添付書類として5年、体系図は営業に関する図書として10年残る(規則26条2項3号・5項3号、28条)。帳簿側の5年は、発注者と結んだ住宅の新築工事だけ10年になる(規則28条1項)。起算点は引渡しの日で、帳簿のほうは請負契約に基づく債権債務が先に消滅したときはその日から数える。案件ごとに保存期限を持たせておく。
下請から集めないと台帳は埋まらない
台帳に書く事項の大半は、自社ではなく下請が持っている情報だ。だから法律は、情報が上へ流れる仕組みを別に置いている。
- 台帳を作る立場になったら 遅滞なく 自社が工事を出した下請全員に書面で通知し 同じ内容を工事現場の見やすい場所に掲げる
- 通知する中身は 自社の商号または名称 再下請負通知を行わなければならない旨 通知書を提出すべき場所
- 一次下請がさらに下へ工事を出したら その都度遅滞なく再下請負通知書を出し 相手にも同じ通知をする
- 再下請負通知書には その契約の書面の写しを添える 民間工事なら請負代金の額の部分は除く
この通知も電子でよい。ただし相手の承諾がいる。使う方法の種類と、ファイルへの記録の方式を先に示して、書面か電磁的方法で承諾をもらう(規則14条の3第5項)。相手から電子はやめると申し出があれば、書面に戻す。
作らなかったときに何が来るか
建設業法24条の8の違反は、許可を出した国土交通大臣または都道府県知事による指示処分の対象になる(同法28条1項)。28条1項は除外する条文を並べて書かれているが、24条の8はそこに入っていない。公共工事について入契法15条1項で読み替えて適用される第1項、第2項、第4項も対象だと、28条1項にわざわざ書き足されている。指示に従わなければ、1年以内の営業停止に進む(同条3項)。
保存のほうには過料がある。帳簿を備えない、記載しない、虚偽の記載をする、帳簿や図書を保存しない。これらは10万円以下の過料と定められている(同法55条5号)。体系図の10年保存はこの図書に入る。
公共工事ではもう一段ある。発注者は施工体制が台帳の記載と合っているかを点検する立場にあり、受注者はこれを拒めない(入契法15条3項)。加えて公共工事では一括下請負が全面的に禁止されている(入契法14条)。台帳と体系図は、その現場を実際に誰が動かしているかを外から確かめるための書面として置かれている。
現場でつまずきやすいところ
- 契約時点で下請の総額が4,000万円台でも 追加工事で下請を足して5,000万円に達した日から作成義務が生じる
- 自社が注文者でない下請契約の写しを民間工事で添えるときは 請負代金の額の部分を除く
- 工事に従事する者の資格は 本人が希望しないなら書かない
- 体系図は施工中の下請が分かる状態に保つ 入れ替わったら直す
- 公共工事の体系図は 工事関係者用と公衆用の二か所に掲げる
- 引渡しで現場の備え置きは終わるが 営業所側の5年と10年はそこから始まる
よくある質問
よくある質問
- 施工体制台帳はいくらから必要ですか
- 民間工事は、発注者から直接請け負った工事のために結んだ下請契約の請負代金の総額が5,000万円以上、建築一式工事なら8,000万円以上になったときに必要になります。下請契約が二つ以上あるときは合計で見ます。公共工事に金額の下限はなく、下請契約を一件でも結べば必要です。
- 一次下請も施工体制台帳を作るのですか
- 作りません。作成義務は発注者から直接工事を請け負った元請にあります。一次以下の下請が負うのは、自分がさらに下へ工事を出したときに、その都度、元請へ再下請負通知書を出す義務です。通知書にはその下請契約の書面の写しを添えます。
- 施工体系図はどこに掲げますか
- 民間工事は工事現場の見やすい場所です。公共工事はそれに加えて、公衆が見やすい場所にも掲げます。どちらも、工事目的物の引渡しをするまで掲げ続けます。
- 施工体制台帳はいつまで保存しますか
- 工事現場に備え置くのは目的物の引渡しまでです。そのあとは、技術者と下請に関する部分を営業所の帳簿の添付書類として引渡しから5年間保存します。施工体系図は営業に関する図書として、引渡しから10年間保存します。
- 紙ではなく電子データで持ってもよいですか
- よいです。記載事項をファイルや電磁的記録媒体に記録し、必要に応じて工事現場でパソコンなどの画面にはっきり表示できるなら、台帳への記載に代えられます。添付書類はスキャナで読み取った記録で代えられます。下請への通知も、相手の承諾を得れば電子でできます。
- 作らなかったらどうなりますか
- 許可を出した国土交通大臣または都道府県知事から必要な指示を受ける対象になります。指示に従わない場合は営業停止に進みます。帳簿や図書を保存しなかったときは、10万円以下の過料が定められています。
台帳は現場の記録の集まりでできている
書く中身をたどると、契約書、技術者の資格証、下請の許可番号、社会保険の加入状況、入場した人の職種と教育の記録に行き着く。どれも工事のあいだに一度は手元を通る紙だ。台帳が重いのは、書く量より、散らばった紙を引渡しの日までかき集める段取りのほうにある。契約や入退場の記録をその都度残しておく道具を入れると、この段取りの部分が軽くなる。
台帳と体系図は、検査のために作る飾りではない。誰がその現場に入っていて、誰が技術上の管理を持っているかを、外から一目で確かめられるようにする書面だ。事故や紛争が起きた日に、いちばん先に開かれる。
出典: 建設業法(昭和24年法律第100号)e-Gov法令検索
出典: 建設業法施行令(昭和31年政令第273号)e-Gov法令検索
出典: 建設業法施行規則(昭和24年建設省令第14号)e-Gov法令検索
出典: 公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(平成12年法律第127号)e-Gov法令検索
出典: 公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律施行規則(令和6年国土交通省令第105号)e-Gov法令検索
出典: 国土交通省 建設業の許可とは
SOKUOYAKATA編集部

