先に結論 撮った瞬間に情報を入れて後から触らない
工事写真で後から疑われるのは、写っている中身よりも、いつ誰が何をしたか分からない状態のほうだ。国土交通省の写真管理基準(案)は、小黒板に書く項目を決めたうえで、撮った後の写真編集を認めていない。撮影の瞬間に必要な情報を全部写し込み、カメラから取り込んだファイルには手を触れない。この形にしておけば、公共工事でも民間工事でも同じ写真が通る。
- 小黒板に工事名 工種等 測点(位置) 設計寸法 実測寸法 略図のうち必要な項目を書いて被写体と一緒に写す
- 有効画素数は小黒板の文字が判読できることを目安にする 100万画素程度から300万画素程度
- 撮った後の写真編集は認められていない 電子小黒板による小黒板情報の電子的記入だけが例外になる
- 電子小黒板を使うなら 改ざん検知機能を持つソフトを選ぶ
- 取り込んだ元のファイルはそのまま残し 整理も提出もコピーで行う
黒板に書く6項目は国が決めている
写真管理基準(案)の2-2撮影方法に、小黒板へ記載する項目が6つ並んでいる。工事名、工種等、測点(位置)、設計寸法、実測寸法、略図。このうち必要な事項を、文字が判読できるように被写体とともに写し込む、と書かれている。全部を毎回書くのではない。その写真で何を示したいかで選ぶ。
| 小黒板の項目 | その写真で示したいこと |
|---|---|
| 工事名 | どの現場のどの契約か |
| 工種等 | 何の作業を写した写真か |
| 測点(位置) | 現場のどこを写したか |
| 設計寸法 | 図面ではいくつになっているか |
| 実測寸法 | 実際にいくつだったか |
| 略図 | その寸法をどこで測ったか |
黒板が入らない場所の逃げ道も同じ項目に書いてある。小黒板の判読が困難となる場合は、デジタル写真管理情報基準に規定する写真情報(写真管理項目の施工管理値)に必要事項を記入して整理する。読めない黒板を写したまま提出せず、数値は写真管理ファイル側に入れる。
電子小黒板は写真編集にあたらない
黒板を持つ人手が要らなくなるので、電子小黒板を使う現場が増えた。基準の2-5はこう書いている。写真の信憑性を考慮し、写真編集は認めない。ただし、デジタル工事写真の小黒板情報電子化についての一部改定について(令和5年3月15日 国技建管第6号)に基づく小黒板情報の電子的記入は、これに当たらない。
その通知が使用機器に求めているのは二点だ。写真管理基準の2-2に示す項目を電子的に記入できること。そして信憑性確認、つまり改ざん検知機能を持つこと。改ざん検知にはCRYPTREC暗号リストに記載された技術を使うこととされている。通知が示す特記仕様書の記載例では、着手前に使用機器を監督職員へ提示し、完成時には信憑性チェックツールで確認した結果を写真と一緒に提出することになっている。
電子小黒板の導入費用は、技術管理費の写真管理に要する費用に含まれるものとされている。撮影に使うソフト、信憑性チェックツールを載せた写真管理ソフト、工事写真ビューアの機器経費と電算使用料までが対象だ。
写真編集は認めないという一行の重さ
基準の書き方はそっけない。写真の信憑性を考慮し、写真編集は認めない。デジタル写真管理情報基準の6章も同じ一行だ。何を消してよくて何がだめか、という細かい線引きはどこにも書かれていない。触った時点で疑われる、という設計になっている。
やっかいなのは、加工するつもりがないのに写真が変わる場合だ。電子納品等運用ガイドライン【土木工事編】には、カメラからパソコンへ取り込む方法によって写真ファイルの更新日時が変わることがある、と書かれている。さらに、画像の編集ソフトで閲覧した場合、未編集であっても上書更新するとExif情報が欠落する場合がある、と注意されている。撮影日時が消えた写真は撮り直しがきかない。
元のファイルを触らないための手順
- カメラやスマホから取り込んだら まず日付と現場名のフォルダにそのまま置く
- そのフォルダは読み取り専用にして 以後の作業はコピーしたファイルで行う
- 画像編集ソフトで開かない 中身の確認は閲覧用のビューアで済ませる
- 別の媒体かクラウドにバックアップを取る ガイドラインでも奨励されている
- 並べ替えや台帳への貼り付けをしても 元のファイル名と撮影日時は残しておく
画素数は上げすぎると後で困る
有効画素数は小黒板の文字が判読できることを指標とする。デジタル写真管理情報基準の解説では、100万画素程度から300万画素程度、画面の大きさでいえば1,200×900程度から2,000×1,500程度が目安として示されている。いまのスマホは設定を変えなければこれを大きく超える。
不要に有効画素数を大きくすると、ファイル容量が大きくなり、電子媒体が複数枚になるとともに操作性も低くなる。基準がわざわざそう書いている。撮る前にカメラの日付と撮影モードを確認する。
| 決めておくこと | 基準に書かれている内容 |
|---|---|
| 色 | カラー |
| 有効画素数 | 小黒板の文字が判読できること 100万画素程度から300万画素程度 |
| 写真の記録形式 | JPEG TIFF SVG形式等 |
| 圧縮比 | 撮影モードによる圧縮比がある場合は標準 BASIC 約1/16圧縮 |
| ファイル名 | Pに続く英数字7文字 半角英数大文字 拡張子3文字以内 |
| 動画の記録形式 | MP4形式等 監督職員の承諾を得たうえで使用 |
| 映像のフレームレート | 実速度で撮る場合は30fps程度が基本 |
令和8年3月版の写真管理基準(案)は、適用範囲の1-1で、写真を映像と読み替えることも可とする、と書いている。動画で残す道が正面から開いた。ただし監督職員の承諾が要るのは変わらない。
撮影頻度と提出頻度は別のもの
工事写真の枚数で揉めるのは、この二つを混ぜているときだ。電子納品等運用ガイドライン【土木工事編】は、撮影頻度を各工事段階で撮影する枚数、提出頻度を撮影したうち工事写真帳に貼付整理し提出する枚数と説明している。令和8年3月版の写真管理基準(案)の撮影箇所一覧表に欄があるのは撮影頻度〔時期〕のほうで、使用材料の形状寸法なら各品目毎に1回、といった書き方で工種ごとに並んでいる。
| 呼び方 | 意味 |
|---|---|
| 撮影頻度 | 各工事段階で撮影する枚数 |
| 提出頻度 | 撮影したうち写真帳に貼付整理して提出する枚数 |
| 代表写真 | 提出頻度写真のうち 工事の全体概要や当該工事で重要となる写真 |
代表写真の撮影箇所は監督職員と受注者の協議により決定する、とガイドラインに書かれている。撮る側が後から選ぶものではない。着工前に決めておけば、完成間際に撮り直す話にならない。
撮らなくていい写真も決まっている
写真管理基準(案)の2-4に、省略できる場合が挙がっている。
- 品質管理写真は 公的機関で実施された品質証明書を保管整備できる場合は撮影を省略する
- 出来形管理写真は 完成後に測定可能な部分について 出来形管理状況のわかる写真を工種ごとに1回撮り 後は省略する
- 監督職員または現場技術員が臨場して段階確認した箇所は 出来形管理写真の撮影を省略する 臨場時の状況写真も不要
枚数を減らすのは手抜きではなく、基準に書いてある扱いだ。逆に、撮影項目や撮影頻度が工事内容に合致しない場合は監督職員の指示により追加も削減もある。着工前に撮影箇所一覧表と自社のやり方を突き合わせる。
写真をいつまで残すか
工事写真は施工管理記録であり電子成果品ではない、とガイドラインは整理している。では軽い書類かというと逆で、工事検査における出来形の確認や、引渡後に粗雑工事を疑われたときの対応として保存が必要な書類だ、と続く。
| 残すもの | 起点 | 期間 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 帳簿と添付書類 | 目的物の引渡し | 5年間 | 建設業法施行規則28条1項 |
| 発注者と締結した住宅の新築工事に係る帳簿 | 目的物の引渡し | 10年間 | 建設業法施行規則28条1項かっこ書き |
| 完成図 発注者との打合せ記録 施工体系図 材料費等記載見積書など | 目的物の引渡し | 10年間 | 建設業法施行規則26条5項 28条2項 |
| 新築住宅の構造耐力上主要な部分等の瑕疵 | 引渡し | 10年間の担保責任 | 住宅の品質確保の促進等に関する法律94条1項 |
工事写真そのものは、この図書の一覧には入っていない。それでも10年前の工事について言われたときに、施工中の状況を示せるのは写真だけだ。契約不適合を理由とする請求は、注文者が不適合を知った時から1年以内に通知しないと主張できない(民法637条1項)。債権そのものは、権利を行使できることを知った時から5年、行使できる時から10年で時効消滅する(民法166条1項)。
26条5項の図書は、電子計算機のファイルや電磁的記録媒体に記録され、必要に応じて営業所で紙面か画面に明確に表示できるなら、その記録で紙に代えてよい(同条8項)。写真も置き場所より、すぐ出せるかどうかで考える。
民間工事でも公共の形に揃える
ここまでは国土交通省の直轄工事の基準で、民間工事に法的な強制力はない。それでも同じ形に揃えておくと得をする。
- 元請や発注者から写真を求められたときに そのまま渡せる
- 撮影日時と黒板が写っていれば 言った言わないになりにくい
- 公共工事を取りにいくときに 社内のやり方を作り直さずに済む
- 職人が入れ替わっても 撮り方の説明が紙1枚で済む
いちばん効くのは、追加工事や手直しの請求で揉めたときだ。指示を受けた日に、その場所を、黒板付きで撮ってある。それだけで話が短くなる。
明日から変えられること
- 現場で使うカメラとスマホの日付設定と画素数設定を今日そろえる
- 6項目のうちこの現場では何を毎回書くかを決めて 現場に紙で貼る
- 取り込み先のフォルダを決めて 元のファイルは触らない運用にする
- 電子小黒板を使うなら 改ざん検知機能の有無を仕様書で確認する
- 撮影箇所一覧表と自社の撮り方を突き合わせて 撮らなくていい写真を落とす
枚数を増やしても信用は増えない。増えるのは整理の時間だけだ。撮った瞬間に情報が入っていて、元のファイルが触られていない。疑われないのはこの二つが揃った写真で、どちらも撮る前の準備で決まる。
撮影と同時に案件と工程へひもづけて、元のファイルを残したまま台帳や報告書に回す道具もある。
よくある質問
- 工事写真の明るさ補正はしてもいいですか
- 写真管理基準(案)の2-5は、写真の信憑性を考慮して写真編集を認めていない。何が編集にあたるかの細かい線引きは基準に書かれていないので、直轄工事では触らないのが安全だ。暗くて写らない場所は、照明を足して撮り直す。
- 電子小黒板を使うと改ざんを疑われませんか
- 小黒板情報の電子的記入は写真編集に当たらないと、写真管理基準(案)の2-5に明記されている。ただし条件がある。写真管理基準2-2の項目を電子的に記入でき、改ざん検知機能を持つ機器やソフトを使うこと。改ざん検知にはCRYPTREC暗号リストに記載された技術を使うこととされ、納品時には信憑性確認の結果を写真と一緒に提出する。
- スマホで撮った写真でもいいですか
- 写真管理基準(案)はデジタルカメラを使用した撮影から提出までに適用されるとしており、機種の指定はない。求められているのは、小黒板の文字が判読できる有効画素数と、JPEGなどの記録形式と、撮った後に編集しないことだ。取り込みアプリが自動で加工や圧縮をしない設定になっているかだけ確認する。
- 工事写真は何年残せばいいですか
- 建設業法施行規則28条は、帳簿と添付書類を引渡しから5年間、発注者と締結した住宅を新築する工事に係るものは10年間としている。完成図や発注者との打合せ記録などの図書は10年間だ。写真そのものはこの一覧に入っていないが、新築住宅の構造耐力上主要な部分等には引渡しから10年間の担保責任があるので、図書と同じ10年に揃えておくと管理が一つで済む。
- 黒板が写り込まない場所はどう撮りますか
- 写真管理基準(案)の2-2に扱いが書かれている。小黒板の判読が困難となる場合は、デジタル写真管理情報基準に規定する写真情報の施工管理値に必要事項を記入して整理する。読めない黒板を写したまま提出せず、数値は写真管理ファイル側に入れる。狭い場所や高所はこの扱いになる。
- 撮影頻度と提出頻度は何が違いますか
- 撮影頻度は各工事段階で撮影する枚数、提出頻度はそのうち工事写真帳に貼付整理して提出する枚数を指す。この整理は電子納品等運用ガイドライン【土木工事編】に書かれている。令和8年3月版の写真管理基準(案)の撮影箇所一覧表に工種ごとの欄があるのは撮影頻度〔時期〕のほうだ。さらに提出頻度写真のうち工事の全体概要や重要となるものが代表写真で、その撮影箇所は監督職員と受注者の協議で決める。
出典: 国土交通省 工事成績・施工基準関係(写真管理基準・デジタル工事写真の小黒板情報電子化の掲載ページ)
出典: 国土交通省 写真管理基準(案)令和8年3月(令和8年3月23日 国官技第521号の3)
出典: 国土交通省 デジタル工事写真の小黒板情報電子化についての一部改定について(令和5年3月15日 国技建管第6号)
出典: 国土交通省 デジタル写真管理情報基準(令和5年3月)
出典: 国土交通省 電子納品等運用ガイドライン【土木工事編】(R8.2版)
SOKUOYAKATA編集部

