検査の前日に写真を探し始めて、夜中までかかる。多くの現場で起きているのは、撮り忘れではなく整理の不足だ。撮った枚数は足りているのに、どれがどの工種のどの段階かを、撮った本人しか判定できない状態になっている。
この記事は、撮る段階で整理を終わらせるための手順を並べる。撮り方そのものよりも、撮った直後に何が決まっているかのほうが効く。証拠として疑われない残し方は別の記事で扱っているので、ここでは提出までの手間に絞る。
先に結論 探す時間は撮った瞬間に決まる
- 撮る前に、何を撮るかの一覧を作る。撮ってから選ぶと、足りない分が検査の直前に判明する
- 小黒板に工事名・工種・測点・施工状況を必ず入れる。写真の中に文字があれば、あとで機械にも人にも読める
- その日のうちに分類する。翌日に回すと、撮った本人の記憶だけが頼りになる
- 提出前に、基準が求める分類と並びに合わせる
4つのうち、いちばん効くのは3つ目だ。当日中に分ければ10分で済むものが、1か月後には半日かかる。
撮る枚数は感覚で決めない
国土交通省の写真管理基準は、工種ごとに撮影項目と撮影頻度を定めている。施工状況、安全管理、使用材料、品質管理、出来形管理、災害、事故、その他という区分があり、それぞれ何を撮るかが表になっている。公共工事ならこの表が正で、民間工事でもこの形に揃えておけば、後から求められたときに困らない。
| 区分 | 撮るもの | よくある抜け |
|---|---|---|
| 施工状況 | 着手前と完成、施工の各段階 | 着手前を撮り忘れる |
| 使用材料 | 材料の品名と規格が分かる状態 | 現物だけ写して表示が写っていない |
| 品質管理 | 試験の状況と結果 | 結果の数値が読めない距離で撮る |
| 出来形管理 | 寸法を確認できる状態 | スタッフやテープが見えていない |
| 安全管理 | 安全設備の設置状況 | 設置直後だけで、使用中がない |
「よくある抜け」は、どれも撮り直しが利かない。着手前を撮り忘れたら、その工事ではもう撮れない。撮る前の一覧を作るのは、この取り返しのつかなさを避けるためだ。
小黒板に入れる項目を決めておく
小黒板に書く内容は基準で決まっている。工事名、工種など、測点、設計寸法、実測寸法、略図の6つが基本だ。工種によって使う項目は変わるが、工事名と工種と測点は、どの写真にも入れておくほうがよい。
理由は検査ではなく、探すときのほうにある。写真の中に文字が写っていれば、ファイル名や台帳が壊れても、写真そのものから何の写真かが分かる。逆に黒板が空の写真は、台帳から切り離された瞬間に価値を失う。
電子小黒板を使うとき
国土交通省はデジタル工事写真の小黒板情報電子化を認めていて、黒板を持たずに撮影し、写真に電子的に情報を埋め込む方法が使える。人手が減り、黒板の置き場を探す時間も消える。ただし対応した機能を使う必要があるので、どのやり方で撮るかは工事の開始前に決めておく。
その日のうちに分ける
分類を翌日以降に回すと、判定できる人が撮った本人だけになる。本人が別の現場に移った時点で、その写真は誰にも分類できなくなる。1日の終わりに5分、次の3つだけ決める。
- どの工種か
- どの区分か(施工状況・品質管理・出来形管理など)
- 捨てるものはその場で捨てる(手ブレ、重複、試し撮り)
3つ目を省く現場が多いが、ここが効く。1つの対象で10枚撮って全部残すと、検査のときに10枚から1枚を選ぶ作業が発生する。その場で選んでおけば、あとで選ぶ人がいなくなる。
提出の形に合わせる
公共工事では電子納品が前提になっていて、写真のフォルダ構成やファイルの付け方はデジタル写真管理情報基準で決まっている。提出の直前に合わせようとすると、数百枚の付け替えが発生する。工事の開始時に、納品の形をそのまま日々の置き場にしておくほうが早い。
| いつ決めるか | 決めること | 後回しにしたときの手間 |
|---|---|---|
| 着工前 | 撮影項目の一覧と、撮る人 | 撮り忘れが検査の直前に判明する |
| 着工前 | 黒板の書き方と、電子小黒板を使うか | 工事の途中で形式が変わり、写真が二種類になる |
| 着工前 | 置き場のフォルダ構成 | 提出前に数百枚を付け替える |
| 毎日 | 工種と区分の分類、要らないものの削除 | 1か月後に半日かかる |
| 提出前 | 基準どおりの並びと、抜けの確認 | 抜けが見つかっても撮り直せない |
民間工事でも同じ形にしておく
民間工事には電子納品の要領がそのまま適用されるわけではない。それでも同じ形に揃えておく理由が2つある。1つは、施主や設計者から後で求められたときにそのまま出せること。もう1つは、現場ごとにやり方が違うと、人が移ったときに毎回覚え直しになることだ。
会社の中でやり方を1つに決めておくと、公共と民間で頭を切り替えなくてよくなる。この切り替えのコストは、現場を掛け持ちしている人ほど大きい。
明日から変えられること
- いま動いている現場で、着手前の写真が揃っているかを確かめる。抜けていたら、この先の工事で撮る一覧を先に作る
- 黒板に工事名と工種と測点が入っているかを、直近の20枚で確かめる
- 1日の終わりに5分、その日の写真を工種と区分で分ける時間を作る
- 要らない写真をその場で捨てる。残す枚数を決めておくと迷わない
よくある質問
- 写真は何枚撮ればよいのか
- 国土交通省の写真管理基準が工種ごとに撮影頻度を定めているので、公共工事はそれに従います。民間工事に決まりはありませんが、同じ基準に揃えておくと後から求められたときに困りません。枚数を増やすより、必要な段階が抜けていないことのほうが重要です。
- 電子小黒板は公共工事でも使えるのか
- 国土交通省はデジタル工事写真の小黒板情報電子化を認めており、対応した方法であれば黒板を持たずに撮影できます。ただし発注者ごとに運用が異なる場合があるので、着工前に特記仕様書や協議で確認しておくほうが安全です。
- 撮り忘れに気づいたらどうすればよいのか
- 着手前や中間の段階は撮り直せません。気づいた時点で監督員に報告し、代替となる記録(出来形の測定値、材料の納品書、日報の記載など)で補えるかを協議します。黙って似た写真を充てるのは改ざんになるので避けてください。
- スマートフォンで撮ってもよいのか
- 問題ありません。画素数の要件を満たしていれば機材の種類は問われません。ただし撮影後に編集できるアプリを経由すると疑われる余地が生まれるので、撮ったものをそのまま保存する経路にしておきます。
- 整理のために写真を撮り直してもよいのか
- 同じ状態を撮り直すのは構いませんが、別の日に撮ったものを当日の写真として出すことはできません。撮影日時は写真の情報として残るので、整理の都合で日付を合わせようとすると、そこで信用を失います。
出どころ
出典: 国土交通省 工事成績・施工基準関係(写真管理基準の掲載ページ)
出典: 国土交通省 デジタル工事写真の小黒板情報電子化についての一部改定について
SOKUOYAKATA編集部

