建設業就業者は1997年平均の685万人から2025年平均で478万人まで減りました。内訳を見ると技能者は455万人から296万人へ落ちている一方、技術者は41万人から41万人でほぼ横ばいです。技術者の頭数は増えていない。だから現場が増えたとき、採用で解くのは現実的ではなく、1人の技術者が合法的に持てる現場の数を増やすほうに手がかりがあります。
先に結論として使える手は6つ
- 専任特例1号を使って1人が2現場を兼任する(主任技術者でも監理技術者でも使える)
- 専任特例2号を使い、1級技士補を監理技術者補佐として各現場に置き、監理技術者が2現場を兼任する
- 営業所技術者に現場を1つだけ持たせる
- 近接した2工事を1人の専任の主任技術者でまとめる
- 型枠工事と鉄筋工事は特定専門工事として下請の主任技術者を省く
- 1級の第一次検定を先に通させ、技士補を計画的に増やす
どれも国土交通省が用意した正規の制度です。ただし要件が細かく、途中で1つ外れると遡って違反になる作りなので、順に条件を確認します。
まず誰を置くかの線引き
2025年2月1日施行の政令改正で、判断の金額が上がりました。いま有効な線はこうです。
| 判断すること | 基準 | 根拠 |
|---|---|---|
| 監理技術者を置くか | 元請が結んだ下請契約の合計が5,000万円以上(建築一式は8,000万円以上) | 建設業法26条2項・施行令2条 |
| 特定建設業の許可が要るか | 同じ金額 | 建設業法3条1項2号・施行令2条 |
| 施工体制台帳を作るか | 同じ金額 | 建設業法24条の8・施行令7条の4 |
| 技術者を専任にするか | 公共性のある施設等の重要な建設工事で、請負代金が4,500万円以上(建築一式は9,000万円以上) | 建設業法26条3項・施行令27条1項 |
| それ以外 | 主任技術者を置く | 建設業法26条1項 |
改正前は監理技術者が4,500万円(建築一式7,000万円)、専任が4,000万円(建築一式8,000万円)でした。工事費が上がったぶんだけ線を引き直したもので、要件そのものが緩んだわけではありません。
「公共性のある施設等」は官公庁物件だけではありません。施行令27条1項は事務所、工場、倉庫、共同住宅、病院、学校、ホテル、店舗などを列挙しています。民間工事でも金額が届けば専任です。戸建て住宅は入りません。
専任は現場に張り付くことではない
専任は「他の現場の職務を兼務せず、勤務中は常時継続的にその現場の職務にのみ従事すること」であって、常駐は求められていません。監理技術者制度運用マニュアルはここをはっきり書いています。
- 研修、講習、試験、休暇、働き方改革を踏まえた勤務体系などで1日から2日程度現場を離れるのは、適切な施工ができる体制が確保できていれば差し支えない
- それを超える期間、終日離れる日が週の稼働日の半数以上、周期的に離れる場合は、体制を確保したうえで元請の技術者なら発注者、下請の主任技術者なら元請または上位下請の了解を得れば差し支えない
- 代理の技術者の配置、連絡が取れる体制、映像と音声によるリアルタイムの通信手段などが体制の例として挙げられている
- ただし現地での対応が必要な場面は除く
技術者が休めない理由を専任義務に求めているなら、それは制度の読み違いです。書面で体制を決めておけば動かせます。
1人で2現場を持つ 専任特例1号
情報通信技術を使って2現場を兼任する仕組みです。監理技術者だけでなく主任技術者にも使え、下請が置く主任技術者でも使えます。次の全部を満たす必要があります。
- 各工事の請負代金が1億円未満(建築一式は2億円未満)
- 現場間の移動時間が、1日の勤務時間内に巡回でき、災害や事故のときの片道移動がおおむね2時間以内
- 自社が注文者となった下請契約から数えて下請次数が3を超えない
- 各現場に連絡員を置く。土木一式と建築一式は同業種で1年以上の実務経験がある者を現場に置く
- 作業員の入退場を遠隔から確認できるシステムを入れる。CCUSまたはCCUSとAPI連携したものが望ましい
- 人員の配置計画書を作り、現場ごとに備え置く。技術者の時間外労働の見込みと実績も記載する
- 現場の状況を確認できる映像と音声の双方向の機器と通信環境を用意する。一般的なスマートフォンやタブレット、Web会議システムでも可
- 兼務する工事の数が2を超えない
途中で請負代金が1億円以上になった時点、下請次数が3を超えた時点で、それ以降は使えません。専任に戻す必要があります。専任不要の現場と組み合わせることはできますが、その現場も2から7の要件を満たし、合計2現場までです。
連絡員には専任も常駐も求められず、直接的で恒常的な雇用関係も不要です。1人が複数現場の連絡員を兼ねることもできます。工程会議や品質検査が2現場で重なったとき、遠隔の技術者の指示を現場側で伝える役です。
1級技士補を置いて2現場 専任特例2号
監理技術者だけの特例です。各現場に監理技術者補佐を専任で置けば、監理技術者は2現場まで兼任できます。主任技術者には使えません。
- 補佐になれるのは、その工事の種類の主任技術者の資格を持ち、1級の第一次検定に合格した者(1級施工管理技士補)
- または、その工事の監理技術者の資格を持つ者
- 機械器具設置工事、さく井工事、消防施設工事、清掃施設工事は、監理技術者の資格を持つ者に限られる
- 現場が1つでも補佐を置くことはできるが、その場合に他の現場を兼務することはできない
- 情報通信技術の活用方針や補佐の業務について、あらかじめ発注者に説明し理解を得ることが望ましい
1号と2号を同じ技術者が同時に使うことはできません。1号の現場と2号の現場をまたぐ兼務は認められていません。
営業所技術者が現場を1つ持つ
2024年12月13日施行の改正で、営業所技術者(旧称の専任技術者)が現場の主任技術者や監理技術者を兼ねられるようになりました。
- その営業所で請負契約を締結した工事であること
- 兼ねる工事現場の数は1以下(施行令34条)
- 請負代金が1億円未満、建築一式は2億円未満(施行令33条)
- 専任特例1号の移動時間、下請次数、連絡員、情報通信技術、配置計画書、通信機器の要件を満たすこと。移動時間は営業所から現場までで読む
- 営業所技術者が自社と直接的かつ恒常的な雇用関係にあること
- 専任特例との併用はできない
近接した2工事をまとめる
施行令27条2項の古くからある規定です。密接な関係のある2以上の工事を同じ会社が同じ場所または近接した場所で施工する場合、同一の専任の主任技術者が管理できます。
- 対象物に一体性か連続性がある、または施工にあたり相互に調整を要する工事
- 現場相互の間隔がおおむね10km程度
- 専任が必要な工事を含む場合、1人が管理できるのは原則2件程度
- 資材の調達を一括で行う場合や、工事の相当の部分を同じ下請で施工する場合も相互に調整を要する工事に含めてよい
- 主任技術者だけの規定で、専任の監理技術者には適用されない
型枠と鉄筋は下請の主任技術者を省ける
特定専門工事の仕組みです。元請または上位下請の主任技術者が、直接契約した下請の主任技術者の職務も併せて行うことを書面で合意すれば、その下請は主任技術者を置かなくてよくなります。
- 対象は型枠の組立て(大工工事またはとび土工コンクリート工事のうち)と鉄筋工事の2つだけ
- 元請等がその工事を施工するために結んだ下請契約の合計が4,500万円未満であること
- 元請が発注者から直接請け負った工事で、下請合計が5,000万円以上になるものは対象外
- 元請等が置く主任技術者は、同じ種類の工事で1年以上の指導監督的な実務経験があり、その現場に専任であること
- 元請等の主任技術者が下請の作業員に直接作業を指示すると、偽装請負とみなされる場合がある。指示は下請の事業主か現場代理人など責任者に対して行う
使えない手と落ちやすい穴
- 在籍出向者と派遣社員は、直接的な雇用関係にあるとはいえない。技術者として現場に配置できない(企業集団内の出向などについては別途の通知がある)
- 公共工事で元請の専任の技術者や監理技術者補佐を置く場合、入札の申込日以前に3か月以上の雇用関係が必要
- 専任の監理技術者は、監理技術者資格者証の交付を受け、監理技術者講習を過去5年以内に受講した者から選任する
- 工期途中の交代は慎重かつ必要最小限。死亡、傷病、被災、出産、育児、介護、退職などの場合や、工程上合理的な場合に、注文者と合意したうえで行う
数年先を作るなら第一次検定を先に通させる
2024年度から技術検定の受検資格が変わり、第一次検定は年齢だけで受けられるようになりました。1級の一次に受かれば1級技士補になり、主任技術者の資格を併せ持てば監理技術者補佐として配置できます。専任特例2号が使えるようになるということです。
| 区分 | 第一次検定 | 第二次検定 |
|---|---|---|
| 1級 | 受検年度末に19歳以上 | 1級一次合格後に実務経験5年以上/特定実務経験1年以上を含む実務経験3年以上/監理技術者補佐としての実務経験1年以上 |
| 2級 | 受検年度末に17歳以上 | 2級一次合格後に実務経験3年以上(建設機械は2年以上)/1級一次合格後に実務経験1年以上 |
特定実務経験とは、請負金額4,500万円(建築一式は7,000万円)以上の工事で、監理技術者や主任技術者の指導の下、または自ら技術者として行った経験を指します。発注者側の経験や、技術者配置の規定が適用されない工事の経験は含まれません。2028年度までは改正前の受検資格でも第二次検定を受けられます。
順番として現実的なのは、若手を早く1級一次に通し、監理技術者補佐として1年経験させ、そのまま1級二次に進ませる形です。補佐の1年で二次の受検資格が立つので、会社が持てる現場数と本人の資格が同じ動きで増えます。
配置は紙で管理すると必ず崩れる
ここまで見たとおり、どの特例も金額と現場数と下請次数が動いた瞬間に前提が変わります。専任特例1号は人員の配置計画書に技術者の時間外労働の見込みと実績まで書けと求めていて、これは日々の打刻や日報と切り離しては書けません。誰がどの現場を何件持っていて、請負代金がいくらで、次数がいくつか。この4つが常に見えていない会社は、書類上は合法でも実態がいつ外れたか誰も気づけません。
ソクオヤカタは、現場写真と一言のメモから見積や日報や完了報告の下書きをAIが作り、打刻がそのまま労務原価と案件原価につながる仕組みです。技術者が何の現場に何時間入ったかが記録として残るので、配置計画書に書く実績も、後から説明を求められたときの根拠も、同じ場所から取り出せます。
よくある質問
- 監理技術者は請負金額いくらから必要ですか
- 元請が結んだ下請契約の合計が5,000万円以上、建築一式なら8,000万円以上のときに監理技術者を置きます。2025年2月1日施行の政令改正で上がった金額で、改正前は4,500万円、建築一式は7,000万円でした。特定建設業の許可が要るかどうかと、施工体制台帳を作るかどうかも、同じ金額で判断します。
- 専任の技術者は現場に常駐しなければいけませんか
- 常駐までは求められていません。専任とは、他の現場の職務を兼務せず、勤務中は常時継続的にその現場の職務にのみ従事することを指します。研修や休暇などで1日から2日程度現場を離れるのは、適切な施工ができる体制が確保できていれば差し支えありません。それを超えて離れる場合は、元請の技術者なら発注者、下請の主任技術者なら元請または上位下請の了解を得ます。
- 1人の技術者が2つの現場を兼任できますか
- 専任特例1号を使えば2現場まで兼任できます。主任技術者でも監理技術者でも使え、下請が置く主任技術者にも使えます。各工事の請負代金が1億円未満(建築一式は2億円未満)であること、災害時の片道移動がおおむね2時間以内であること、下請次数が3を超えないこと、各現場に連絡員を置くことなど、8つの要件をすべて満たす必要があります。途中で金額や次数が要件を外れた時点から、それ以降は使えません。
- 監理技術者補佐は誰がなれますか
- その工事の種類の主任技術者の資格を持ち、1級の第一次検定に合格した1級施工管理技士補がなれます。その工事の監理技術者の資格を持つ者でも構いません。ただし機械器具設置工事、さく井工事、消防施設工事、清掃施設工事は、監理技術者の資格を持つ者に限られます。各現場に補佐を専任で置けば、監理技術者は専任特例2号として2現場まで兼任できます。
- 営業所技術者は現場の主任技術者を兼ねられますか
- 2024年12月13日施行の改正で兼ねられるようになりました。その営業所で請負契約を締結した工事であること、兼ねる現場は1つまでであること、請負代金が1億円未満(建築一式は2億円未満)であることが条件です。あわせて専任特例1号と同じ移動時間、下請次数、連絡員、情報通信技術などの要件も満たす必要があり、専任特例との併用はできません。
- 派遣社員を主任技術者として配置できますか
- できません。在籍出向者と派遣社員は、会社と直接的な雇用関係にあるとはいえないため、技術者として現場に配置できません(企業集団内の出向などについては別途の通知があります)。公共工事で元請の専任の技術者や監理技術者補佐を置く場合は、さらに入札の申込日以前に3か月以上の雇用関係が必要です。
出典: 建設業法(e-Gov法令検索)
出典: 国土交通省 監理技術者制度運用マニュアル(令和7年1月28日最終改正、令和7年2月1日適用)
SOKUOYAKATA編集部
