先に結論
- メール・クラウド・ECサイトなどで受け取った請求書や領収書は、データのまま保存する。印刷した紙は保存の代わりにならない
- 満たすのは2つだけ。改ざんを防ぐ措置(真実性の確保)と、探して見せられる状態(可視性の確保)
- 専用ソフトは要らない。ファイル名の付け方と事務処理規程だけで満たせる
- 2課税年度前の売上高が5,000万円以下で、調査のときにデータのダウンロードの求めに応じられるなら、検索の設定そのものが不要になる
- 準備が間に合わない場合は猶予措置がある。ただしデータを消したら適用されない
どれが電子取引にあたるか
国税庁は、次のような受け取り方をすべて電子取引としています。建設・設備の会社で日常的に起きているものばかりです。
- 資材屋やメーカーから請求書PDFがメールで届く
- 元請の発注システムやクラウドサービスで注文書・請書をやり取りする
- ネット通販で工具や消耗品を買い、サイトから領収書データをダウンロードする
- ETCの利用証明書をウェブ上で発行して受け取る、アプリ決済やクレジットカードの利用明細データを取得する
- ペーパーレス化されたFAX機能つき複合機で請求書を受け取る
- EDIシステムを使う、またはDVDなどの記録媒体で請求データを受け取る
紙で受け取った領収書をスマホで撮って捨てる話は、スキャナ保存という別の制度です。こちらは任意。電子で受け取ったものをデータで残すことは義務、という違いを混ぜないでください。
満たすべき要件は2つ
真実性の確保
次の4つのうち、どれか1つを満たせば足ります。
- 送り手がタイムスタンプを付けたデータを受け取る
- 受け取ったあと、自社でタイムスタンプを付ける
- 訂正・削除の履歴が残る、または訂正・削除ができないシステムで授受と保存をする
- 正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理規程を定めて、そのとおり運用する
4番なら費用はかかりません。国税庁が法人用・個人事業者用の規程サンプルをWordで配っています。サイト上のファイル名は「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程(法人の例)」と「(個人事業者の例)」なので、この名前で探してください。管理責任者と適用範囲を決めて、社名と日付を入れれば形になります。
可視性の確保
- パソコン・ディスプレイ・プリンタ・操作説明書を備え、整然とした形式で画面と紙に速やかに出せること
- 取引年月日その他の日付・取引金額・取引先で検索できること
- 日付または金額は範囲を指定して検索できること
- 2つ以上の項目を組み合わせて検索できること
プリンタは常設が原則ですが、調査の時点で置いていなくても、近隣の有料プリンタなどで求めに応じて速やかに出力できれば、それだけを理由に要件違反として扱うことはない、と一問一答に明記されています。
ソフトを入れずに済ませる最小構成
国税庁の一問一答(問19)は、特別なソフトを使っていない事業者について、次の3つで要件を満たすと書いています。
- PDFのファイル名を「20260131_◯◯建材_110000」のように、日付・取引先・金額の順で統一する
- 取引先ごと、または月ごとの任意のフォルダに入れる
- 事務処理規程を定めて備え付け、そのとおり運用する
ファイル名を付けるかわりに、連番だけ振ってExcelの索引簿で日付・金額・取引先を管理する方法も認められます。索引簿のサンプルも国税庁にあります。日付は和暦でも西暦でもかまいませんが、混ぜると抽出の妨げになるのでどちらかに統一します。
検索の設定が要らなくなる条件
| 自社の状況 | 検索要件 |
|---|---|
| 2課税年度前の売上高が5,000万円以下 | 不要 |
| 出力した書面を日付および取引先ごとに整理して提示・提出できる | 不要 |
| どちらにも当てはまらない | 必要 |
どちらの場合も、税務調査でデータのダウンロードの求めに応じられることが前提です。ここが欠けると、売上高が5,000万円以下でも検索要件は消えません。判定するのは、法人なら前々事業年度、個人事業者なら前々年の1月1日から12月31日までの売上高です。
この「売上高」は消費税の課税売上高とは中身が違うので注意してください。営業外収入や雑収入は含めない一方、消費税法上の非課税売上額は含めます。免税事業者や簡易課税を使っていても、非課税売上を含めると5,000万円を超えるなら対象外です(問51)。なお5,000万円という金額は2023年度(令和5年度)の改正で1,000万円から引き上げられたもので、2026年8月時点でもこの水準です。
準備が間に合わないときの猶予措置
2024年1月以降も使える猶予措置があります。所轄税務署長が「要件に従って保存できなかったことについて相当の理由がある」と認め、かつ税務調査の際にデータと、それを出力した書面の両方を出せるようにしている場合は、保存時の要件が問われません。事前の申請や届出は不要です。
- システムや社内のワークフローの整備が間に合わない事情は相当の理由に含まれる、と一問一答(問93)が示している
- 人手不足や資金不足も幅広く認められる理由として、国税庁が令和5年12月に出した「令和6年1月からの電子取引データの保存方法」で挙げている
- 整備は済んでいて要件どおり保存できるのに、していないだけの場合は使えない
- 猶予措置を使う場合でも、データそのものの保存は必要。紙に出力したものだけを残す運用は認められない
建設業で先につまずくところ
現場の立替払い
職長が資材や消耗品をネットで買い、領収書データを自分のスマホで受け取る。それが会社の行為として行われるなら、会社としての電子取引にあたります。会社で集約して保存するのが望ましいものの、集約するまでの一定の間は本人のパソコンやスマートフォンに置いたままでも、日付・金額・取引先の検索条件に紐づく形で会社が保存状況を管理していれば認められます(問12)。調査で本人の端末のデータを提出できる体制までは要ります。
高速道路の利用証明書が積み上がる
現場を回れば高速道路の利用は増えます。ETCの利用証明書は、必要な範囲を自分で指定してウェブ上で発行してもらうものなので、発行を受けていない分についてまで、あえてダウンロードして保存する必要はありません(問44、問46)。ただし消費税の仕入税額控除のために任意の一取引の利用証明書を発行してもらった場合は、その1枚は受け取った書類にあたるので、電子帳簿保存法の要件を満たして保存します。クレジットカードの利用明細と組み合わせてよいという扱いは消費税の側の話で、発行を受けたデータの保存義務を消すものではありません。
保存期間が2本立てになる
| 対象 | 根拠 | 期間 |
|---|---|---|
| 法人の帳簿書類 | 法人税法 | 確定申告書の提出期限の翌日から7年 |
| 青色申告で欠損金が生じた事業年度 | 法人税法 | 10年 |
| 営業所ごとの帳簿と添付書類 | 建設業法施行規則28条1項 | 引渡しまたは債権債務の消滅から5年(発注者と結んだ住宅の新築工事は10年) |
| 完成図・発注者との打合せ記録・施工体系図 | 建設業法施行規則28条2項 | 引渡しから10年 |
税法の年数だけを見てフォルダを整理すると、建設業法の側で足りなくなります。案件単位で消す判断をする前に、どちらの時計で数えているかを確認してください。
電子契約のガイドラインが新しくなった
2025年(令和7年)9月30日、国土交通省の「電磁的措置による建設工事の請負契約の締結に係るガイドライン」が施行され、平成13年の旧ガイドラインは廃止されました。建設業法19条3項で電子契約を成立させるには、相手方の事前承諾と、建設業法施行規則13条の4第2項が定める次の3つの技術的基準が要ります。
- 見読性 相手方がファイルの記録を出力して書面を作れること
- 原本性 改変が行われていないかを確認できること。公開鍵暗号方式による電子署名、タイムスタンプ、またはこれらと同等の効力を認められる方法を使う
- 本人性 相手方が本人であることを確認できること
事前承諾は、講じる電磁的措置の種類と内容(サービス名やPDFなどの記録方式まで示すことが望ましい)を相手に示したうえで、書面か、メール・クラウド・記録媒体で得ます。事業者署名型(立会人型)のサービスを使う場合は、本人性の対応策として2要素認証などを利用することが望ましいと明記されました。このガイドラインは施行日以後にサービス利用契約を結ぶ場合に適用され、施行日前に結んだものは従前の例によります。
守らなかったときに起きること
- 災害等のやむを得ない事情も税務署長が認める相当の理由もなく、要件に従った保存がない場合は、青色申告の承認の取消対象になり得る。ただし違反の程度を総合勘案し、真に青色申告書を提出するにふさわしくないと認められるかを検討したうえで判断される
- 電子データに関連して隠蔽・仮装があった場合は、重加算税が10%加重される。データを消して売上を除外した、経費を水増しした、保存されたデータが取引実態を表していない架空取引だった、といった場合が対象
2025年度(令和7年度)の改正で、一定のシステムを使って送受信・保存した電子取引データはこの加重の対象から除かれる仕組みが作られましたが、施行は2027年(令和9年)1月1日で、あらかじめ届出も要ります。今日の話ではありません。
今週やること
- 直近1か月の受信メールと、元請のシステム、通販サイトを開き、請求書・領収書・注文書のデータが月に何件入ってきているかを数える
- 保存場所を1つ決める。共有フォルダでもクラウドでもよいが、1か所にする
- 国税庁のサンプルから事務処理規程を作り、管理責任者と適用範囲を埋めて備え付ける
- ファイル名の付け方を紙1枚にして、事務と現場の両方に配る
- 前々年(前々事業年度)の売上高を確認し、検索の設定が要る側か要らない側かを決める
書類が現場から入ってくる会社ほど散らばる
要件そのものは重くありません。難しいのは、請求書や領収書が事務所だけでなく、現場のスマホや職長の個人メールから入ってくることです。集める場所が決まっていないと、規程を作っても運用が追いつきません。
ソクオヤカタは、現場写真と一言のメモから見積・日報・完了報告の下書きをAIが作り、担当者が確認して出すサービスです。打刻がそのまま労務原価から案件の原価・粗利につながります。保存要件を代わりに満たす道具ではありませんが、案件ごとに書類とお金が1か所に集まる状態は作りやすくなります。画面は日本語・ベトナム語・インドネシア語・英語・中国語・ミャンマー語の6言語。料金はLite 29,800円、Standard 49,800円、Pro 79,800円(月・税込)です。
よくある質問
- メールで届いた請求書は印刷して保存すればいいですか
- 印刷した紙は保存の代わりになりません。メールやクラウドサービス、通販サイトなどで受け取った請求書や領収書は、2024年1月以降データのまま保存します。猶予措置を使う場合でもデータそのものの保存は必要で、紙に出力したものだけを残す運用は認められません。
- 電子帳簿保存法に対応する専用ソフトは必要ですか
- 必要ありません。国税庁の一問一答(問19)は、特別なソフトを使っていない事業者について、PDFのファイル名を「20260131_◯◯建材_110000」のように日付・取引先・金額の順で統一し、任意のフォルダに入れ、事務処理規程を定めて運用すれば要件を満たすとしています。規程のサンプルは法人用と個人事業者用が国税庁にWordで置いてあるので、社名と日付、管理責任者と適用範囲を埋めれば形になります。
- 検索できる状態にする設定は必ず必要ですか
- 2課税年度前の売上高が5,000万円以下なら不要です。出力した書面を日付および取引先ごとに整理して提示・提出できる場合も不要になります。どちらも税務調査でデータのダウンロードの求めに応じられることが前提で、ここが欠けると売上高が5,000万円以下でも検索要件は消えません。
- 準備が間に合わない場合はどうすればいいですか
- 猶予措置があります。所轄税務署長が要件に従って保存できなかったことについて相当の理由があると認め、税務調査の際にデータとそれを出力した書面の両方を出せるようにしていれば、保存時の要件は問われません。事前の申請や届出は不要で、システムや社内のワークフローの整備が間に合わない事情のほか、人手不足や資金不足も理由として挙げられています。ただし整備は済んでいて要件どおり保存できるのに、していないだけの場合は使えません。
- 電子取引データの保存期間は何年ですか
- 税法と建設業法で二本立てになります。法人の帳簿書類は法人税法で確定申告書の提出期限の翌日から7年、青色申告で欠損金が生じた事業年度は10年です。建設業法施行規則28条1項の営業所ごとの帳簿と添付書類は引渡しまたは債権債務の消滅から5年(発注者と結んだ住宅の新築工事は10年)、完成図や発注者との打合せ記録、施工体系図は引渡しから10年なので、案件単位で消す前にどちらの時計で数えているかを確認してください。
- 要件どおりに保存していないとどうなりますか
- 災害等のやむを得ない事情も税務署長が認める相当の理由もなく、要件に従った保存がない場合は、青色申告の承認の取消対象になり得ます。ただし違反の程度を総合勘案し、真に青色申告書を提出するにふさわしくないと認められるかを検討したうえで判断されます。電子データに関連して隠蔽や仮装があった場合は、重加算税が10%加重されます。
出典: 国税庁 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】令和8年7月
出典: 国税庁 令和6年1月からの電子取引データの保存方法(令和5年12月)
出典: 国税庁 タックスアンサー No.5930 帳簿書類等の保存期間
SOKUOYAKATA編集部

