生産性向上6

建設現場のDXはどこまで進むのか 今すぐできること

国が掲げているのは2040年度までに省人化3割。大きな話に見えるが、中小の会社に先に効くのは技術者の兼任と遠隔での確認のほうだ。公式資料の数字と、今日から始められる順番を並べた。

現場の上空を飛ぶドローンと、進捗確認や写真管理や図面比較の項目が並んだタブレットを持つ作業員の写真

建設現場のDXは、掛け声ではなく期限と数字のついた計画になっている。国土交通省は2024年4月にi-Construction 2.0を策定し、2040年度までに建設現場の省人化を3割以上、生産性を1.5倍以上にすると掲げた。比べる相手は2023年度だ。

ただ、この数字がそのまま中小の会社に降りてくるわけではない。直轄工事から順に基準が動き、民間工事には少し遅れて届く。先に効くものと、まだ遠いものを分けておかないと、いま買わなくていい道具を買うことになる。

先に結論 いま効くのは人の配置のほう

項目いつから中小への効き方
監理技術者等の専任義務の合理化2024年12月13日すぐ効く。技術者1人で2現場まで持てる
電磁的措置による請負契約すでに可能すぐ効く。相手の承諾さえ取れば始められる
BIM/CIMの原則適用2023年度から直轄民間の小規模工事にはまだ遠い
ICT施工・自動施工段階的に拡大中土工の規模次第。持っていない会社は借りて試す段階

上の2つは、道具の値段ではなく手続きの話だ。だから資本の大きさに関係なく、決めれば今日から効く。下の2つは機械と経験が要るので、順番としては後になる。

技術者1人で2現場まで持てるようになった

2024年12月13日から、主任技術者と監理技術者の専任義務が合理化された。一定の要件を満たせば、専任が必要な工事を同時に2件まで兼任できる。技術者が採れない会社にとっては、この数年で一番大きい変更になる。

ただし要件がある。国土交通省が示しているのは次の4つだ。

  1. 技術者と連絡を取り、必要な措置を行う連絡員を配置する(土木・建築工事の場合、その工種で1年以上の実務経験が必要)
  2. 情報通信技術を使って、現場の施工体制を確認できるようにする
  3. 人員配置計画を作り、現場に備え置く
  4. 現場の状況を現場の外から確認できる機器を設置する
兼任できるのは2件までで、3件目はない。また2つ目の要件について、国土交通省は建設キャリアアップシステム、またはCCUSとAPI連携したシステムが望ましいとしている。それ以外でも、作業員の入退場を遠隔で確認できるものであれば認められる。

つまり、この制度を使うには先にCCUSか、それに準じた入退場の記録の仕組みが要る。カードリーダーを置くかどうかは、技術者を増やすか兼任させるかの判断とつながっている。

i-Construction 2.0が目指しているもの

2016年に始まったi-Constructionは、ICT建設機械を使って施工そのものを効率化するものだった。2024年のi-Construction 2.0は、対象を施工だけでなく、データの連携と施工管理まで広げている。国土交通省が挙げている柱は3つだ。

  • 施工のオートメーション化(建設機械の自動化・遠隔化)
  • データ連携のオートメーション化(設計から施工、維持管理までデータでつなぐ)
  • 施工管理のオートメーション化(遠隔での確認、書類の削減)

中小の会社に先に届くのは3つ目だ。遠隔での確認が標準になると、立ち会いのために現場へ往復する時間が減る。1つ目は機械の入れ替えが要るので、保有台数の多い会社から進む。

3割という数字の意味

2040年度までに省人化3割は、10人でやっていた現場を7人でやるという意味になる。逆から見れば、いまの人数のまま1.4倍の工事量をこなせる。技能者の高齢化を考えると、増やすための数字ではなく、減っても回すための数字だと読むほうが実態に近い。

BIM/CIMはどこまで来ているか

国土交通省の直轄事業では、令和5年度から小規模なものを除く詳細設計と工事でBIM/CIMが原則適用になっている。3次元モデルを納品物として扱う運用が本格的に始まった段階だ。

一方で、民間の小規模な改修や住宅の工事にそのまま降りてくる話ではない。公共工事を受ける予定がないなら、いま3次元モデルを内製できるようにする優先度は高くない。受ける予定があるなら、発注の仕様書に何が書かれているかを先に読むほうが早い。

買う前に試せるもの

やること要るもの始めるまでの手間
遠隔での現場確認現場に置けるカメラと回線1現場で試せる
写真の整理と共有スマートフォンと置き場今日から
電子での契約相手方の承諾と電子署名の仕組み承諾を取るところから
ドローンによる出来形の計測機体と操縦できる人、または外注1工事ぶんを外注して比べる
ICT建設機械機械の導入またはレンタル土工の規模が要る

上から順に、要るものが増えていく。上2つは費用がほとんどかからないので、効果を測るのに向いている。下2つは、まず1工事だけ外注して、自社でやる場合と比べてから決めるほうが損をしない。

効果を測るときの物差し

  1. その作業に何時間かかっていたかを、替える前に1週間ぶん記録する
  2. 替えたあと、同じ作業で同じ1週間を測る
  3. 差が出なければ元に戻す。戻せる形で始める
測らずに入れると、使わなくなったあとも料金だけ払い続けることになる。替える前の時間を記録していない状態では、効いたかどうかを誰も判定できない。

進まない理由はたいてい道具ではない

  • 現場で入れる人が決まっていない。事務所でまとめて入れ直している
  • 紙と電子が並行して残り、探す場所が2つになっている
  • 決めた規則が現場に伝わっておらず、人によってやり方が違う

この3つは、どれだけよい道具を入れても解けない。入れる前に、誰がいつ入れるかを1行で決めておく。決まっていないまま配ると、現場は今までどおり紙で回し、道具の料金だけが増える。

明日から変えられること

  1. 技術者が専任で貼りついている現場が2つあるなら、兼任の4要件に当てはまるか確かめる
  2. 当てはまりそうなら、入退場を記録する仕組みから先に手を付ける
  3. 遠隔で確認したい作業を1つ選び、1現場だけカメラを置いて試す
  4. 替える前の作業時間を1週間ぶん記録しておく

よくある質問

監理技術者の兼任は、どんな工事でも使えるのか
専任が必要な工事が対象で、同時に兼任できるのは2件までです。連絡員の配置、情報通信技術による施工体制の確認、人員配置計画の作成と現場への備え置き、現場外から状況を確認できる機器の設置という要件をすべて満たす必要があります。要件を1つでも欠くと専任義務の違反になります。
CCUSに入っていないと兼任は使えないのか
CCUSそのものが必須というわけではありません。国土交通省はCCUSまたはCCUSとAPI連携したシステムが望ましいとしていますが、作業員の入退場を遠隔で確認できる仕組みであれば他のものでも認められます。ただし記録が残らない運用では要件を満たしません。
公共工事を受けないならBIM/CIMは関係ないのか
直轄工事の原則適用は発注者側の運用なので、受注しないなら直接の義務はありません。ただし地方自治体の発注でも3次元データの提出を求める例が増えているので、公共を受ける可能性があるなら、発注の仕様書に何が書かれているかを毎回確かめておくほうが安全です。
省人化3割は、人を減らせという意味なのか
国土交通省の資料は2023年度と2040年度を比べた省人化として示しており、同じ工事量をより少ない人数でこなす状態を指しています。技能者の高齢化で働く人自体が減っていく前提の数字なので、いまいる人を減らす目標としては読まないほうが実態に合います。
小さい会社が最初に手を付けるならどれか
費用がかからず戻しやすいものからです。具体的には写真のファイル名の付け方を決めること、電子で受け取った請求書のデータを消さずに残すこと、遠隔で確認したい作業を1つだけ選んで1現場で試すことの3つです。機械を買う判断は、この3つを回してからで間に合います。

出どころ

出典: 国土交通省 i-Construction 2.0を策定しました(報道発表)

出典: 国土交通省 i-Construction 2.0 建設現場のオートメーション化

出典: 国土交通省 監理技術者等の専任義務の合理化・営業所技術者等の職務の特例

出典: 国土交通省 BIM/CIM関連基準要領等

出典: 国土交通省 i-Construction 2.0の2025年度の取組予定(報道発表)

SOKUOYAKATA編集部

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